はじめに:なぜ今、選挙費用のデータを全公開するのか?
民主主義の根幹である「選挙」。そのプロセスがどのように運営され、どれだけの公費(税金)や自己資金が投じられているのかを知ることは、有権者にとって極めて重要な権利です。
選挙収支報告書自体の情報公開請求・閲覧手続きのハードルは高くないものの、全体像を比較・検証することは容易ではありません。
情報を開示できたとしても、収支報告書は紙をスキャンしたPDF画像で、文字情報を持ちません。
つまり、他の都議(当選者)と並べて比較しようとすると、1件ずつ目で読んで転記するしかありません。情報の非対称性がある状態では、健全な政策論争や公平な審判は成り立ちにくいと言えます。
そこで今回、私さんのへあやは、選挙管理委員会にて適法に公開された公式記録をもとに、候補者127人分の選挙費用データを整理・集計し、どなたでも閲覧・分析できるオープンデータとして公開することにいたしました。
オープンデータを公開する目的は、特定個人の粗探しやバッシングではありません。「選挙という制度がどう機能しているのか」を可視化し、有権者が事実に基づいて判断できる土壌をつくることです。
データを読み解くうえでの注意点
このデータを建設的な議論に活かしていただくため、以下の点に注意してご覧ください。
選挙に係る支出は、「公費(税金)で負担されるもの」と「候補者の自己資金」に分かれている
選挙では主に次の費目が公費負担の対象になります。
- 選挙運動用ポスターの作成費
- 選挙運動用ビラの作成費
- 選挙運動用自動車の使用、燃料費、運転手の雇用
いずれも上限が条例で定められ、その範囲内であれば、候補者ではなく都が業者に支払います。
選挙収支報告書では、これを「支出のうち公費負担相当額」として内訳とともに記載します。
選挙区ごとにポスターとビラの公費負担の上限額が異なる
ビラは全選挙区共通で、単価8円38銭、作成枚数は16,000枚まで。
したがって限度額は8.38円×16,000枚=134,080円です。この16,000枚は公職選挙法が定める法定枚数で、これを超えて配ること自体ができません。
一方でポスターは、選挙区ごとに公費負担の上限額が違います。
作成できる枚数の上限はポスター掲示場の数×2枚。単価の上限は掲示場数から算式で決まり、掲示場が少ない選挙区ほど1枚あたりは高くなります。ポスター掲示場の数は、有権者数に応じて決められるため、有権者数が多い選挙区ほど、公費負担上限額が高くなります。
掲示場数が500以下:単価上限=(586円88銭×掲示場数+316,250円)÷掲示場数 掲示場数が500超:単価上限=(293,440円+30円73銭×(掲示場数−500)+316,250円)÷掲示場数
限度額は「単価上限×枚数上限」です。都全体のポスター掲示場は14,150か所ですが、選挙区別に見ると、たとえば最も有権者数が多い世田谷区は掲示場898か所、単価上限693円、枚数上限1,796枚で限度額1,244,628円ですが、23区内で最も有権者数が少ない千代田区は106か所・3,571円・212枚で757,052円です。
「公費負担を上限まで使うこと=悪」ではない
選挙運動費用の一部がなぜ公費(税金)で負担されるようになっているかと言いますと、これは、民主主義の原点となる選挙において、候補者の資金力の多寡にかかわらず立候補できるようにするためです。
この公費負担は、資金力による有利不利を抑え、公平な言論の機会を保障するための枠組みです。
よって、定められている上限金額を目一杯使い切ること自体が直ちに不当を意味するわけではありません。
選挙収支支報告書に「載らないお金」の存在
選挙にかかるお金は以下のとおり四種類に分類できます。
①選挙収支報告書に記載し、公費負担されるもの。(例:選挙運動用ビラやポスター代など)
②選挙収支報告書に記載し、公費負担されない(自己負担する)もの。(例:選挙事務所の賃料など)
③選挙収支報告書に記載しなくてよいが、公費負担されるもの。(例:選挙カーの車両レンタル代など)
④選挙収支報告書に記載しなくてよいが、公費負担されないもの。(例:候補者本人の交通費、供託金など)
③について補足しますが、選挙収支報告とは別で公費申請というものがあるため、「選挙収支報告書に記載しないが公費申請はできる」ものがあります。つまり、この選挙収支報告書が「選挙でかかったお金の全て」ではないということです。
【データ補足】「0円」と表記されている項目について
集計データ内において、公費請求が「0円」となっている項目があります。これらはすべて選挙管理委員会に提出された原本通りであることを事務局と照合・確認済みです(入力漏れではありません)。
0円となる背景には、以下のような正当な理由が存在します。
*公費請求の辞退: 税金を使わず、自己資金で賄う選択をした場合
*ボランティア・自作: 外部業者に発注せず、陣営内で自作・対応した場合
*機材の無償貸与・別費目での契約 など
その他、計算が合わない箇所など、原本側の記載ミスと思われる箇所も複数箇所ありましたので、その旨はオープンデータの冒頭「README」に個別に記載しております。
オープンデータについて
- 並び順:選挙区順(千代田区から島部まで)、選挙区内は得票数の多い順。フィルタで任意の順に並べ替えられます
- 収録:当選者127名の選挙区・会派・得票・立候補準備/選挙運動の別・実額・公費負担相当額・自己負担額・公費比率・一票単価・ポスター/ビラの単価・枚数・金額・選挙区別公費限度額・限度額消化率
- 出典(金額):東京都選挙管理委員会に情報公開請求して取得した選挙運動費用収支報告書(初回取得165件+2025年10月〜2026年4月の更新・追加分34件)
- 出典(得票):同委員会「候補者別得票数(全候補)」確定値
- 出典(限度額):同委員会「令和7年執行東京都議会議員選挙 ポスター作成経費に係る選挙区別公費負担限度額(単価改定後)」および公費負担経費請求の記載案内
- 採用値:各候補の最新報告書の「支出の部計」総計欄(訂正がある場合は訂正後の値)
- 検証:金額は全件をOCRで機械照合し、差異のあるもの・手書き訂正のあるものは原本画像を目視で照合。得票数は127名全員を確定値と照合
- ライセンス:CC BY 4.0(出典を示せば自由に再利用できます)
作成にあたっては可能な限りの検証を行いましたが、お気づきの点は aya.sannohe@gmail.com までご指摘ください。
確認のうえ速やかに修正し、修正履歴も公開します。
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疑問が生じたときは、直接議員へ!
「なぜ同じ地域でこれほど金額差があるのか?」
「なぜこの金額・発注方法をとったのか?」といった個別の支出理由や戦略の妥当性は、実際に税金や資金を使用した各議員・候補者ご自身が有権者に説明すべき領域です。
データを見て疑問や関心を持たれた方は、ぜひご自身の選挙区の議員の活動報告会、SNS、事務所等へ直接質問を投げかけてみてください。
有権者が事実を知り、問いを立て、対話が生まれることこそが、より良い選挙制度と地域政治をつくる第一歩になります。
私は江東区議会議員を務めていた時から「納税者として収めた税金が、何にどのくらい使われているか分からない」状態を改善(情報公開)し、納税者・有権者としての意識を改めて認識して頂くことをモットーに活動しております。自身が出馬した選挙でも例外ではなく、候補者として説明責任を果たすために選挙費用の見える化に取り組んで参りました。
過去ブログはこちら▼
公開されている情報が、実際に使える形になってはじめて、議論の土台になります。
本データが、選挙とお金をめぐる建設的な検討の材料になれば幸いです。
さんのへ あや





