はじめに
2022年9月20日に行われた本会議での自民党会派所属 星野議員 一般質問の場において、議員として極めて不勉強であり、議員としての品位を欠く発言がありました。
事実に基づかない発言によりLGBT当事者の方々を傷付けたにも関わらず、本人はその後の委員会の場などにおいても、繰り返し「差別発言ではなく、言論の自由」と主張しています。
自身の不勉強を認めず、実態とそぐわない発言により意図的に他者を傷つける発言は容認できず、何よりも多様性を肯定するソーシャルワーカーとして看過できません。
よって、本ブログにおいて星野議員の発言が事実に基づかない発言であるかを明らかにし、区民の皆様からの判断を仰ぎたいと思います。
一般質問における発言とそれに対する事実
昔のことを話しても始まりませんが、私たち団塊の世代の感覚では、こどもを虐待し、特に殺害する事件など、当時は特殊な事例であったとの記憶があります。物質的には当時より我々の生活は豊かになりましたが、逆に、家庭の在り方や親子の関係は退化しているのかなと考えさせられてしまいます。
令和4年第3回定例会(第11号)35番 星野博議員質疑より抜粋
<実態>
団塊の世代とは、戦後第一次ベビーブームの時に生まれた子ども(1947年(昭和22年)〜1949年(昭和24年))です。その団塊の世代が成人となって以降、日本法医学会が実施した「虐待により殺された子どもの調査」によると、昭和43年~52年の9年間で186件、その中でも実の父母による殺害が130件と報告されています。一年でおよそ14名もの子どもが実の父母により殺害されていた事から、特殊な事例とは言い難い状況であった事がわかります。
23区では渋谷区が最初に条例を導入し、その後、多くの自治体が何らかの形でパートナーシップ制度を導入しております。私は、個人的にこれらの条例が、伝統的な結婚や家族の概念を変質させ、国家の根幹である婚姻制度、家族制度の衰退と少子化の進行につながることを危惧しております。
令和4年第3回定例会(第11号)35番 星野博議員質疑より抜粋
<実態>
パートナーシップ制度導入が少子化に繋がることは科学的にも根拠がありません。既にG7の日本以外の国々において婚姻の平等が法制化されていますので、それらの国で少子化が発生しているかどうかを示す根拠として下記のデータを示します。
まず、G7の日本以外の国々が、所謂婚姻の平等を法制化した年がこちらです。
カナダ | 2005年〜 |
フランス・イギリス | 2013年〜 |
アメリカ | 2015年〜 |
イタリア | 2016年〜 |
ドイツ | 2017年〜 |
上記の国々の合計特殊出生率の推移が下記の通りです。
法制化後に出生率が減ったりして見える国もありますが、ドイツに至っては出生率は法制化後も上がっており、婚姻の平等の法制化と出生率の低下は因果関係がないと言えます。こちらは少し古い文献ではありますが、同性カップルへの婚姻の保障が出生率低下とは関係がない旨が書かれています。
Carlos A. Ball “Same-sex marriage does not threaten birth rates or child-rearing”
https://jp.reuters.com/article/idUS397711017020130325
東京都のパートナーシップ宣誓制度でも、パートナーシップ関係にあることを宣言し、要件を満たせば届出が受理されるとしております。これにより、公営住宅への加入も家族として入居ができるようになるようであります。現在、都営・区営住宅への入居希望者は殺到しており、大変な倍率とお聞きいたします。疑似カップルを装うことでの制度悪用の可能性は必ずあると考えますが、疑似カップルを識別する方法はあるのでしょうか。
令和4年第3回定例会(第11号)35番 星野博議員質疑より抜粋
<実態>
疑似カップル=同性愛者には限定することはできません。また、公共住宅への入居についてはパートナーシップ関係にある方も家族としての入居ができます。
そして、パートナーシップ関係にある方全員が入居できるわけではなく、あくまでも所得が定められた基準内である事が条件となります。パートナーシップ制度を利用したカップルは「疑似である」という論拠がない上に、制度悪用の可能性が必ずあるという結論には相関性がありません。
また、先日、養子縁組をし、高額な保険に加入した義母を殺害し、保険金を受け取ろうとした容疑者が自殺した事件が報道されました。パートナーシップ宣誓制度では、パートナーを生命保険金の受取人に指定することもできるようですし、財産の引継ぎも可能であれば、このような事件がパートナーシップ制度の浸透で今後は増加するのではと考えます。少数者の人権保護や多様性の容認を理由に、国家の基幹である憲法を逸脱することで、社会の混乱に拍車がかかることを私は危惧いたします。
令和4年第3回定例会(第11号)35番 星野博議員質疑より抜粋
<実態>
LGBTの人々による犯罪発生率(他殺率)の増加に関するデータは海外文献でも見つける事ができませんでした。その一方、LGBTの人々が犯罪被害者になる率が、LGBTでない人の4倍というデータがあります。
Study finds LGBTQ people much likelier to be crime victims
https://www.pbs.org/newshour/nation/study-finds-lgbtq-people-much-likelier-to-be-crime-victims
LGBTの人々が自身だけでなく家族も差別的に扱われ、何らかの事件の被害者となる可能性が高いとされています。何よりも、今回の星野議員のような発言が、LGBTの人々、特にパートナシップ制度の利用を希望している若者のメンタルヘルスを悪化させる可能性が懸念されます。
まとめ
他の議会において、制度導入について反対の意見がありますが、それらの意見を差別発言として批判し、発言者が発言を取り消すなどの事例も他の議会ではあります。何事も賛成・反対の意見はあるわけでありまして、活発な議論は民主主義の基本であります。活発な議論を阻害し、反対する意見を人権侵害や差別と一方的に決めつけて言論の自由を制限すること、これはあってはならないことであると私は考えます。
令和4年第3回定例会(第11号)35番 星野博議員質疑より抜粋
活発な議論とは、論拠に基づいた事実の認識があった上で初めて行う事ができるものです。
上記に記載した4点の発言に対する実態から、そもそもの発言が実態に基づかない事がわかります。
また、社会的少数派、マイノリティの人々に対する支援は「賛成」「反対」のみで判断される事はなく、同調圧力や、優勢的な立場にあることも議論に影響をもたらします。
(私は過去に優生思想に対する警鐘を鳴らした記事を執筆しましたので、宜しければご参照下さい。)
何よりも、本会議における一般質問とは「議員が分からない事を尋ねる場」ではありません。
あらかじめ案件(問題)を調査し、論理構成した自分の主張を行政に正す。
知らない事や分からない事をあらかじめ調査しておき、それをもとにさらに深めて答弁者側を追及し議論するものです。主観や個人的な見解だけでは行政は動かない事は、議員であれば分かっている筈です。
「最後に好きなだけ言いたいことを言って議員を辞めたい」という意図があったとしても、この質疑通告を通してしまう自民党会派には自浄作用は期待できません。
また、「会派としての考え方ではない」と自民党会派は表明していますが、星野区議の発言を取り消すことなくその後も静観し続けています。
今後も、LGBT当事者の皆さまに寄り添いながら、江東区としてのパートナーシップ制度導入に取り組みつつ、こうしたブログでの発信を通じて区議会として失った信用を少しでも取り戻せる様に尽力して参ります。
さんのへ あや