はじめに

仙台市長の海外出張経費が、市議会で指摘されるまで詳しく公表されていなかったことが報じられ、首長による海外出張にあらためて注目が集まっています。

東京都の小池知事は、出張ごとの日程・出張人数・総経費・主な行動と成果を、都のホームページ「海外出張・交際費」で公表しています。

本ブログ記事では、この公表資料をもとに、私自身の調査メモも兼ねて2016年8月の就任から現在(2026.11.1時点)までの海外出張を一覧にまとめました。

議会で指摘されて初めて詳細を公表するという行政の情報公開のあり方そのものを問う視点と、そもそも首長の海外出張は本当に必要なのか?という疑問を皆さまと一緒に考えたいと思います。

仙台市で何があったのか

仙台市では、郡和子市長の2023〜2025年度の海外出張11回分の経費が、総額約6,673万円に上ることが市議会で明らかになりました。

  • 2026年9月の定例市議会で、市議から「費用が高額ではないか」と指摘
  • これを受けて市は10月23日、経費の内訳と旅程を市ホームページで初めて公表
  • 3年間で市長と職員あわせて延べ63人が参加。最高額は2023年11月のバンコク訪問で約954万円
  • 市長は会見で、国際会議の誘致、航空便の就航、外国人宿泊者数の過去最高などを成果に挙げ、支出は適切だったとの認識を示した

仙台市も出張の目的や活動報告は以前から掲載していたと説明しています。しかし、経費の内訳が出たのは議会で問われた後でした。

都知事は公表していますが…

小池知事の海外出張は、出発前の報道発表と、帰国後の「主な行動・成果」「出張人数」「総経費」が都のホームページで公表されています。

一方で、部局長クラスの幹部職員であるスタートアップ戦略推進本部長の海外出張が過去約3年間公表されておらず、私が2025年11月に行われた各決算審査において指摘するという質疑告知をした直後に報告書が公開されました(東京新聞でも報道)。

更に、公開された報告書も訪問先の羅列が中心で、費用に見合う成果があったかを判断できる内容ではありませんでした。

仙台市と都の例から見える問題は、2つあります。

  1. 議会で追及されないと、詳細が公表されないこと。この状態は多くの自治体・地方議会で続いています。
  2. そもそもその海外出張は必要なのかということ。外交は本来国が担うものです。首長同士が積極的に海外へ出向くことの効果と是非が問われます。

以下からは、主に2点目を考えます。

数字で見る小池知事の海外出張(2016年8月~2026年11月)

就任以来の海外出張は27回、総経費は約2億181万円です(経費公表済分)。1回あたり平均約747万円、延べ205名が出張し、訪問した国・地域は24にのぼります。

小池知事の海外出張経費は、コロナ明けの令和4年度以降に急増

年度別の総経費(随行職員を含む)。就任以来27回・約20,181万円

1,304万円
1,254万円
857万円
900万円
出張なし
出張なし
4,014万円
3,649万円
2,989万円
3,241万円
1,973万円
H28
2回
H29
3回
H30
1回
R1
2回
R2
0回
R3
0回
R4
5回
R5
4回
R6
3回
R7
5回
R8
2回

青=令和4年度以降。令和2・3年度はコロナ禍で出張なし。令和8年度は10月までの公表分(11月のパリ/バルセロナ/ロンドン出張は経費未公表)。下段は出張回数。
出典:東京都「海外出張・交際費|知事の部屋」(2026年10月30日取得)を年度別に集計

小池知事の海外出張一覧(新しい順)

No期間出張先訪問国・地域人数総経費(千円)
28R8.11.1~11.7(実施中)パリ/バルセロナ/ロンドンフランス/スペイン/英国未公表未公表
27R8.7.14~7.19ニューヨーク米国79,864
26R8.5.17~5.23アムステルダム/ロッテルダム/アスタナオランダ/カザフスタン79,865
25R8.2.3~2.6パリ/ローマフランス/イタリア55,598
24R7.10.25~11.3アブダビ/ドバイ/リヤド/ジッダ/クウェート/カイロ/ギザUAE/サウジアラビア/クウェート/エジプト87,516
23R7.7.20~7.27ワシントンD.C./ニューヨーク米国67,289
22R7.5.21~5.23リヤドサウジアラビア65,938
21R7.4.13~4.15パリフランス76,064
20R7.2.5~2.8バンコクタイ98,450
19R6.11.6~11.14カイロ/アブダビ/バクーエジプト/UAE/アゼルバイジャン812,728
18R6.5.5~5.9ロサンゼルス/シリコンバレー米国78,716
17R6.2.4~2.8ニューサウスウェールズ州/台北豪州/台湾1012,307
16R5.11.29~12.3アブダビ/ドバイUAE97,416
15R5.8.18~8.23ブダペスト/ヘルシンキハンガリー/フィンランド912,033
14R5.7.6~7.9グジャラート州インド74,733
13R5.2.1~2.4ロンドン英国76,548
12R4.11.5~11.11カイロ/シャルム・エル・シェイク/アレクサンドリア(COP27)エジプト1011,798
11R4.9.15~9.18ニューヨーク米国79,213
10R4.8.29~9.3ジャカルタ/クアラルンプールインドネシア/マレーシア95,522
9R4.5.15~5.18アブダビUAE67,055
8R1.8.26~8.29北京中国104,113
7R1.6.28~6.30ホノルル米国84,891
6H30.10.30~11.4ロンドン/パリ英国/フランス98,567
5H30.3.17~3.19平昌/江陵韓国61,662
4H29.11.15~11.17シンガポールシンガポール94,254
3H29.10.21~10.25パリフランス96,628
2H28.9.15~9.21リオデジャネイロ(パラリンピック)ブラジル/ドイツ55,017
1H28.8.18~8.24リオデジャネイロ(オリンピック)ブラジル58,020
合計(経費公表済27回)205201,805

出典:東京都「海外出張・交際費|知事の部屋」及び各出張の「主な行動・成果」ページ(2026年10月30日取得)。出張先をクリックすると都の公表ページが開きます。経費は随行職員分を含む総経費。2016年9月のリオ出張時に別途フランクフルトへ職員2名が出張(約103万円、本表に含まず)。

コロナ禍前の4年弱(平成28年度~令和元年度)は8回・約4,315万円でした。
令和4年度以降は毎年3~5回、年間約3,000万~4,000万円のペースです。

1回あたりの経費が最も高かったのは、2024年11月のカイロ/アブダビ/バクー(約1,273万円)です。次いでニューサウスウェールズ州/台北(約1,231万円)、ブダペスト/ヘルシンキ(約1,203万円)が続きます。

参考までに、仙台市と同じ令和5~7年度で比べると、都は12回・約9,879万円です。
都市の規模や予算が異なるため単純な比較はできませんが、仙台市超の11回分・約6,673万円というのも相当なペースと金額であるということがわかります。

小池都知事の海外出張一覧(新しい順)

No期間出張先訪問国・地域人数総経費(千円)
28R8.11.1~11.7(実施中)パリ/バルセロナ/ロンドンフランス/スペイン/英国未公表未公表
27R8.7.14~7.19ニューヨーク米国79,864
26R8.5.17~5.23アムステルダム/ロッテルダム/アスタナオランダ/カザフスタン79,865
25R8.2.3~2.6パリ/ローマフランス/イタリア55,598
24R7.10.25~11.3アブダビ/ドバイ/リヤド/ジッダ/クウェート/カイロ/ギザUAE/サウジアラビア/クウェート/エジプト87,516
23R7.7.20~7.27ワシントンD.C./ニューヨーク米国67,289
22R7.5.21~5.23リヤドサウジアラビア65,938
21R7.4.13~4.15パリフランス76,064
20R7.2.5~2.8バンコクタイ98,450
19R6.11.6~11.14カイロ/アブダビ/バクーエジプト/UAE/アゼルバイジャン812,728
18R6.5.5~5.9ロサンゼルス/シリコンバレー米国78,716
17R6.2.4~2.8ニューサウスウェールズ州/台北豪州/台湾1012,307
16R5.11.29~12.3アブダビ/ドバイUAE97,416
15R5.8.18~8.23ブダペスト/ヘルシンキハンガリー/フィンランド912,033
14R5.7.6~7.9グジャラート州インド74,733
13R5.2.1~2.4ロンドン英国76,548
12R4.11.5~11.11カイロ/シャルム・エル・シェイク/アレクサンドリア(COP27)エジプト1011,798
11R4.9.15~9.18ニューヨーク米国79,213
10R4.8.29~9.3ジャカルタ/クアラルンプールインドネシア/マレーシア95,522
9R4.5.15~5.18アブダビUAE67,055
8R1.8.26~8.29北京中国104,113
7R1.6.28~6.30ホノルル米国84,891
6H30.10.30~11.4ロンドン/パリ英国/フランス98,567
5H30.3.17~3.19平昌/江陵韓国61,662
4H29.11.15~11.17シンガポールシンガポール94,254
3H29.10.21~10.25パリフランス96,628
2H28.9.15~9.21リオデジャネイロ(パラリンピック)ブラジル/ドイツ55,017
1H28.8.18~8.24リオデジャネイロ(オリンピック)ブラジル58,020

経費公表済27回の合計:延べ205名・201,805千円

そもそも首長の海外出張は必要なのか

  • 外交は本来、国の役割?

憲法第73条は、外交関係を処理することを内閣の事務と定めています。
地方自治法第1条の2も、国際社会における国家としての存立にかかわる事務は国が重点的に担うとしています。

自治体の国際交流が禁じられているわけではありません。しかしながら、首長同士の会談や国際会議への登壇をどこまで自治体が担うべきかは、整理が必要です。

  • 都が挙げる目的とは

都の公表資料を見ると、目的は主に次の5つです。
①観光誘客、②投資・ビジネス誘致、③スタートアップ支援、④都市間連携、⑤国際会議での発信。

たとえば2025年10〜11月の中東出張(10日間・4か国・8名・約752万円)では、観光PRイベント、国際会議での登壇、ドバイとの都市間連携の合意、都内企業のトップセールスなどが報告されています。
しかしながら、同年8月にはその意思決定プロセスが問題になった「エジプト人労働者の日本での雇用に有益な研修及び情報提供に関する協力に係る合意書」を締結するなど、これらの目的に当てはまらない(強いて言うならば④?)様な合意等を目的に外交が行われている実弟もあります。

  • 検証で問うべき5つの点
  1. 成果が「行動の記録」で終わっていないか。
    誰と会い、何に署名したかは分かります。しかし、その後の観光客数、投資額、商談の成立など、税金に見合う効果が出たかは公表資料からだけでは分かりません。
  2. 首長本人が行く必要があったか。
    国(外務省・観光庁)、JNTOやJETRO、都の海外拠点、担当職員、オンライン参加で代われなかったのか。
  3. 同じ地域への繰り返し訪問の効果。
    UAEは4回、フランス(パリ)は実施中の出張を含めて5回、米国は5回訪れています。前回の成果を踏まえた訪問なのか、説明が必要です。
  4. 随行人数と経費の基準。
    1回あたり平均7~8名が出張しています。人数、航空券のクラス、宿泊費の基準は妥当か。
  5. 費用対効果を誰が検証するのか。
    今は実施する側の自己報告のみで、それを納税者である都民が評価する仕組みはありません。

東京都への提案(EBPMの視点から)

海外出張を「行ったかどうか」ではなく「何が変わったか」で評価する仕組みが必要と考えています。

  1. 出張前:目的と数値目標(KPI)を公表する
  2. 帰国後:1年後・3年後などに、目標に対する成果を数値で検証し公表する
  3. 役割分担:国や関係機関ではなく、首長本人が行く理由を説明する
  4. 基準の明示:随行人数、航空券のクラス、宿泊費の基準を公開する
  5. 幹部職員も同じ基準で:首長だけでなく、部局長などの海外出張も公表・検証する
  6. 議会による検証:決算審査などで費用対効果を確認する

メンっ!と総括

小池知事の海外出張は、2026年11月1日時点で、就任以来27回・総経費約2億181万円という結果でした。
公表されている点は評価できますが、ただ公表されていることと、その出張が必要だったことは別の問題です。

都民は、当たり前ですが、高額な海外出張のために納税しているのではありません。

また、こうした高頻度な海外出張が当然とされてしまうと、納税者側も、議会側もあまり疑問を抱かず、誰もチェックしないという負の連鎖に陥ってしまう危険性も孕んでいます。

首長や幹部の海外出張が本当に必要か、成果は費用に見合っているのか、都民の代表として引き続き都議会で問い続けて参ります。

※2026年11月1日からのパリ/バルセロナ/ロンドン出張についても、経費と成果が公表され次第、本記事に追記します。

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