はじめに

2024年7月に執行された東京都知事選挙からおよそ1ヶ月後、私の自宅に東京都から封書が届きました。

届いた封書(実物)です

封書の裏の差出人は東京都と書かれていましたが、中を開けると本文には「小池都知事 小池百合子」と書かれた手紙が入っていました。

記載されている手紙の本文は以下の通りです。

謹啓盛夏の候ますますご清祥のこととお慶び申し上げます
この度知事として三期目となる首都東京の舵取りを務めることとなりました
寄せられた都政への期待に改めて重責を実感しています
バージョンアップした「東京大改革三・〇」に全身全霊取り組んでまいります
都民の皆様の命を守る暮らしを守る経済を守る未来を守り切り拓くいわば「首都防衛」です
「備えよ常に」の精神で危機管理を強化し
都市の活力の源泉である「人」に光を当てた政策を展開します
チルドレンファーストの下全ての子供たちを社会全体で応援し
女性や高齢の方障がいのある方誰もが輝くよう政策を一層磨き上げて日本の持続可能な未来に貢献していきます
東京はもっとよくなる「都民のために都民とともに」
皆様には一層のご指導ご鞭撻をお願い申し上げます
まずは略儀ながら書中をもって就任のご挨拶を申し上げます
謹白 令和六年八月 東京都知事 小池百合子

選挙を特定していないものの、文中に「三期目となる首都東京の舵取りを務めることとなった」「就任のご挨拶を申し上げます」と明記されていることから当選後の挨拶文であることは誰が見ても明白です。

ここで私は2つの疑問が頭に浮かびました。

疑問① 小池都知事が発した挨拶文は公職選挙法に抵触しているのではないか?

政治家は選挙が行われた後に当選や落選についてのあいさつ行為を制限されており、公職選挙法第百七十八条の二において、あいさつ行為は自筆の信書やインターネットなどに限定され、文書の配布や掲示を禁じています。(違反すると30万円以下の罰金)

もちろん、東京都選挙管理委員会のホームページにもこの旨は禁止行為として明記されています。

参照:https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/qa/qa-katudou/

疑問② この封書の発送にどれだけの公金(税金)が使われているのだろうか?

選挙で選ばれた首長(政治家)が選挙後に挨拶をする事に対して、自治体や我々都民がその費用を負担するべきなのでしょうか。ましてや有権者でもある東京都議会議員宛に郵送する必要は全く無く、どうしても伝えたい事があるのであればメールや議員控室の机上配布で十分な筈です。

更に、こうした挨拶文を税金で作成・発送する事に対しては各地で問題視されており、行政が挨拶文を発行・発送するという違法行為に加担している可能性については2023年8月に隣の埼玉県で事例が既に報道で指摘されています。

以下、記事の引用です。是非全文も併せてお読み下さい。

自治体が首長に代わって事務を担い、公費で負担していることにも疑問の声がある。東京・多摩地区の元市長は「東京ではあり得ない。あしき慣例だ」とし、横浜市も「公選法違反の逮捕者を出さぬよう、(市は)過剰なくらい気を使って対応するものだ」(幹部)と話す。

蕨市長「当選あいさつ」文書、市が公費で発送…公選法抵触指摘も:読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/local/saitama/news/20230824-OYTNT50183/

私は小池都知事の3期目就任挨拶文の作成・郵送についての実態を調査するために、東京都に対して情報開示請求を行いました。

本ブログ記事では、情報開示請求の結果について以下の通り公表させて頂きます。

挨拶文の作成・郵送にどれだけの税金が使われたか

開示請求の結果、明らかとなったのは以下の通りの金額です。

→挨拶状印刷費:202,992円

→郵送料(切手代及び諸島への郵送料含む):126,622円

印刷費及び郵送料を合計した費用総額は329,614円 という事が判明しました。

また、発送した挨拶状は1,211通(実際に郵送料がかかったのは1,168通)で、郵送先は都議会議員を含む各種団体関係者とのことでした。

メンッ!と総括

小池都知事は都知事選挙後、即座に岸田首相に対して公選法改正を直接訴えています。

『小池氏、首相に「公選法改正の議論を」 都知事選のポスター混乱巡り』朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASS79346RS79OXIE01FM.html

自身にとって都合よく法解釈する者が、法改正を訴えながらも、その陰では早速法令違反疑いのあるお金の使い方をするというのは到底理解できません。

更に、小池都知事はこの挨拶文の件以外にも公選法違反の疑義をかけられています。

『小池知事会見動画配信公選法違反疑い弁護士ら東京地検に告発状』NHK 首都圏 NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20240705/1000106183.html

また、国家予算並みの規模で財源を有する東京都において、329,614円という金額は少額と捉えられてしまうかもしれません。
「この程度の金額で…」と思った読者の方もいるかもしれませんが、“この程度”としたお金は、言わずもがな皆さんが働いて納税した税金です。会社の社長が自分の好きなように会社のお金を使うこととは、全くその意味が異なるのです。

たとえ少額であったとしても1つ1つ税金のムダ遣いを是正しなければ、首長として、議員として、大きな行財政改革は実現できませんし、納税者目線を失うことは議員としてあってはなりません。

それにも関わらずこうした問題が浮き彫りにならないのは、「何十年も続く慣習だから」という認識が行政に蔓延していることや、一度当選すると権力側に付いて疑問すら持たない議員が多いからだと指摘します。

今後も二元代表制を担う地方議員としてどんな些細な問題も看過せず、選挙での公約通り税金のムダ遣いと闘って参ります。

公職選挙法違反疑いに対する東京都の見解については、今月開催される第三定例会での一般質問にて質疑したいと思います。

さんのへ あや

【独自調査】小池都知事 就任挨拶文の発送に公費投入 続く公選法違反疑い” に対して2件のコメントがあります。

  1. ほげ より:

    公職選挙法第百七十八条において「挨拶行為」とは
    >当選又は落選に関し、選挙人に挨拶する目的をもつて次に掲げる行為をすることができない。
    と書かれていて、当選または落選に関して、でしょ。
    「当選しました」と書いておらず「就任しました」なので、当選に関する挨拶ではなく知事就任に関する挨拶だね。
    これがダメだと主張したら、就任式そのものが「当選に関する集会の開催」としてアウトになってしまう。

    1. sannohe より:

      ほげ様

      コメント頂き有難うございます。
      蕨市での事例では「当選しました」ではなく「特定の選挙を指しているか否か」が焦点となっておりました。

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