はじめに
2022年12月15日に開催された本会議において、「議案第92号 江東区議会議員および江東区長の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例の一部を改正する条例」について賛否が求められました。
その内容は、選挙時に候補者が使用する選挙カーの借入費用や燃料費及び作成するビラやポスターの公費負担の単価を改訂し、その限度額を引き上げるものです。
※公費負担を申請するには一定数以上の得票数が無ければならない為、売名目的などで選挙に出られた場合の多くは支出対象にはなりません。
物価が高騰し、燃料費や人件費が高くなっている昨今、こうした単価の引き上げは止むを得ないのかもしれません。
しかし、私は悩んだ末に本議案に対して「反対」を表明しました。
結果として42人中1人(私)が反対、その他議員は賛成で本議案は採決されました。
反対した理由
私は企業勤めの一般市民として初めて2019年4月に地方統一選挙に出馬しました。
そこでの選挙運動を通じて「なんじゃこりゃ!?」と思う場面がたくさんありました。
そのうちの一つに挙げられるのが「選挙ポスターの上限金額が相場と全然違う」という事でした。
ご紹介した通り、選挙でかかる費用は100%税金で賄われる訳ではなく、選挙カーの借入代とその燃料費、選挙ビラ、選挙ポスター等には上限金額が設定されています。
上限金額を超えると、当然ながら実費で負担となります。
私は2019年の統一地方選挙に出馬した際に、掲示板に貼る選挙ポスターを「1枚あたり169円」で発注させて頂きました。インターネット上で発注できるネット印刷屋さんですが、当時複数のネット印刷業者と比較しても平均的な値段であった事を記憶しています。
(今は紙の値段が驚くほど高くなったので、この価格はもう出てこないと思います…。)
しかし、その後直ぐに「選挙ポスター印刷費上限は1枚525円6銭」という事実を知り唖然としました。
平均的と考えていた金額と上限額が倍違ったのです。
もしも、私が印刷会社と結託し、本当は169円しかかかっていないポスターを、1枚525円6銭で申請していたら?
その差額、1枚356.6円× 444(2019年統一地方選挙時のポスター掲示板の数=公費負担申請上限枚数)で計算すると15万8330円。
仮に、当選した区議会議員(44人)全員が、169円しかかかっていないポスターを525.6円で申請した場合の金額はおよそ700万円にもなる事がわかりました。
相場と上限金額が違う謎
突然ですが、『はりぼて』という映画をご存じでしょうか。
保守王国と呼ばれる富山県で、政務活動費の不正使用が明らかとなった事により、主に自民党に所属していた市議14人が次々に辞職、報道によって地方議員の狡猾さと滑稽さを明らかドキュメンタリー映画です。
この中で、議員が政務活動費を不正に使用(着服)した際に「飲み会代と称して印刷会社に白紙の領収書をもらった」事などが取り上げられています。
選挙だけでなく、議員となった後も、活動報告の発行などの場面で印刷会社との関係は必然的に続いていきます。
候補者(議員)が選挙や政治活動を行う上で自由に印刷業者を選択できますし、業者側は議員の政務活動費や公費負担の限度額を知っています。
議員と印刷事業者が密接な関係にあればあるほど、税金を必要以上に得るために“癒着することは絶対に無い”と言い切る事は難しいと考えます。
メンッ!と総括
私はこの条例改正に賛成すべきか、反対すべきか悩みました。
なぜならば、選挙の負担額を低くすればするほど自分でお金を用意しなければならない為、若い候補者が減ってしまう事にも繋がりかねないと考えたからです。
選挙では必須とされる三バン(地盤=個別訪問・看板=知名度・鞄=お金)ですが、私はどれも持ち合わせていませんでした。
私は「区民の大切な血税を無駄にしたくない!」と公言し議員を目指しました。
同じ様な事を言っていた候補者もいます。しかし「公費(税金)負担だから高くても良いや」と選挙の時から業者側の言い値がまかり通ってしまう状況は非常に矛盾している様に感じたのです。
選挙では候補者の知名度や所属、お金の有無ではなく、候補者の人となりや政策が重視される事を願いつつ、その流れの一助となる様にこの身を介して「お金のかからない選挙」「税金を無駄にしない選挙」を引き続き実現したいと思っています。
さんのへ あや