2022年9月20日に年に一度の区政一般質問を実施し、質疑動画が公開されました。
前回のブログでご報告させて頂いた通り、今回の質問は大綱1点に絞りました。
その結果、かねてより江東区に要望していた「口利き記録制度」の実施が前向きに検討される事となり、その旨が東京新聞の地方面にて掲載されました。
「口利き記録制度」江東区が導入検討 あっせん収賄罪起訴受け
令和4年9月21日付 東京新聞 日刊地方面より
江東区発注の清掃管理業務を巡り、前区議会議長の榎本裕一区議(66)=無所属=が区職員に入札情報を漏らすよう働きかけたなどとして収賄罪で先月に起訴された事件を受け、山崎孝明区長は二十日の区議会本会議で、区議ら利害関係者から区へ要望があった場合に記録を残す「口利き記録制度」の導入を検討していると明らかにした。議員の一般質問に答えた。区長は、副区長や教育長らでつくる委員会で再発防止策を議論している点に触れ「利害関係者の要望や申し入れを記録、公表する仕組みの構築を課題に挙げている。他自治体を参考に検討を進めている」と述べた。
私の一般質問と答弁がメディアに掲載されるのは初めての事です。
この「口利き記録制度」の必要性に着目し、取り上げて下さった東京新聞に感謝します。
また、今回初となる再質問にもチャレンジしました。その江東区の回答がとんでもなく「お粗末」なものだったのです…。(本ブログ最後に紹介しています。)
お時間のある方は下記に掲載する質疑文全文を是非お読み下さい。
質問と回答全文
以下、私の質問と江東区の回答を分けて記載させて頂きます。
分かりやすい様に一問一答形式にしておりますが、実際は本質問→回答→再質問→再回答という順番で行われています。ご了承下さい。
*****
江東・自由を守る会さんのへあやです。
今年3月にあった江東区の清掃管理業務委託契約に関する指名競争入札をめぐり、秘密情報を漏洩させた見返りに現金30万円を受け取ったとして、江東区議会前議長の榎本区議があっせん収賄容疑で逮捕・起訴されました。江東区議会として、一刻も早い区民からの信頼回復と、議会・議員としての政治倫理の確立に努めなければなりません。
江東区のみならず、国、地方議会、業者、契約担当者間における汚職事件が相次いでいます。
これらの事件の温床となる要因は大きく分けて二つあると推測します。その二つとは、「談合や政官業の癒着」と、「裁量性・恣意性を残した入札・公共調達制度」です。
私は議員となって以降、不正癒着を根絶する為の行財政改革として数々の改善提案をして参りましたが、この様な事件が起こってしまったことは誠に許しがたく、悔しい思いです。本来議員として持ちうるべき倫理観を持たずして、議員としての権限を、自己の利益追及に利用するなど言語道断です。しかし、不祥事が起きたときこそが再発防止策を講ずる好機であり、二度と同じことを起こさせないという徹底的な再発防止策を講じるべく、年に一度の貴重な一般質問の場を使って以下提言させて頂きます。
まず初めに、⑴税金と職員を不正行為から守る行政制度、その仕組みづくりについてです。
住民や事業者からの要望を受けて行政に対し提言することは大切な議員活動の一環であります。しかし、これらは議員としての権力を利用した口利き・斡旋といわれる違法行為と紙一重であるとも言えます。
行政職員を議員等の不当な圧力から守り、情報公開に資する為にも「口利き記録制度」が必須であると考えます。口利き記録制度とは、要望者の氏名、要望内容、行政の対応等を記録し、要望等の記録・公表制度の創設によって議員等からの不合理な要望を抑止し、モラルハラスメントから職員の立場を守る制度です。
不正とは無縁の議会活動に努める議員にとってもこの制度の創設は好都合です。
この記録制度について、榎本元議長に関する事件が発生した後に理事者側へ提案したところ、江東区不正行為等防止検討委員会にて「要望・申し出等の記録及び公表する仕組みの構築」として前向きに協議されていると伺っています。この仕組みは、要望対象者、要望内容、行政の対応等について、一定の基準を設けて実施がなされます。要望者は区議会議員の他に、江東区行政に対し権限を持ちうる人物、すなわち区長、副区長、国会議員、都議会議員も入れる必要があります。また、記録する要望内容については、住民からの要望、入札に関する要望型、団体としての要望、資料作成などの要望の4つに分類できますが、入札に関する要望は事件性・違法性が特に高いとされているため、記録として残す事が必須であると考えます。①職員を圧力から守る為に有効な手段として「口利き記録制度」に関する見解を伺います。
江東区回答①8月26日に設置した江東区契約に係る不正行為等防止検討委員会では、副区長を委員長として、再発防止に向けて業務委託契約に関すること、職員の倫理向上に関すること、議員等利害関係者との関わりに関することの3点を検討事項として挙げております。このうち、議員等利害関係者との関わり方では、議員や事業者、業界団体からの要望や申し出等の記録及び公表する仕組みの構築に想定される課題として挙げております。そのため現在利害関係者からの不当もしくは威圧的働きかけがあった際の記録制度の構築に関しても他の自治体を参考にしているところであります。口利き記録制度において対象者を議員以外に、区長副区長まで広げる事に関しては今後検討委員会の中で議論するものと考えております。
さんのへコメント①口利き記録制度の導入について検討されているとの事で一安心です。事件後直ぐに理事者側に提案しましたので、検討して頂けたものと推察します。「議員等利害関係者」という言い方が気になりますが、いずれにせよ業者と癒着する可能性は議員だけではなく首長や権力のある行政職員にもある訳です。そのため、記録対象者については改めて議論して頂きたいです。
さらに、職員に対する外部者からの圧力・要望等の実態を把握するためにも、全庁をあげて匿名によるアンケート調査を実施し、原因究明に努める必要があります。横浜市では、2003年に不祥事が発覚した際、市職員ら5,500人余りを対象に「不合理と感じる要望等を受けていないかどうか」について調査をしています。この調査の結果、部課長級以外の係長級の職員が、議員から不合理な要望等を受けたとする割合が38%に及んでいます。②江東区の不正行為等防止検討委員会では、管理職である部課長のみに対してアンケート調査が実施されているとのことですが、不正が行われる可能性を一掃するためにも全体調査の実施を要望します。
江東区回答②第一回の検討委員会の中で、不正行為等の把握の為に管理職を対象にアンケートを実施することを決定し、9月6日よりアンケートを実施しております。アンケートの内容については、契約に関する秘密情報は入札前に外部に漏れていると感じた事があることについての有無や、議員や事業者等から働きかけや要請、勧誘等があったか否か、職員倫理研修に関すること、契約に関する秘密情報の漏洩を防ぐための設問をしています。アンケートの対象者については、議員との接触は通常管理職であることや、委託事業者を決定する際の最終決定は課長職以上の職員であることから、部長級課長級以上の職員を対象にしており、全職員を対象にする考えはありません。今後アンケートの集計結果を元に、より広く課題の抽出を行い、契約入札業務以外においても利害関係者との関わり方について改善すべき事項があればこれを機に検討する必要があると考えています。
さんのへコメント②事例の通り、他自治体において係長級の職員が理不尽な要望を受けた過去もあります。少しでも可能性を排除するためにも実施して頂きたい。この考えは変わりません。
加えて、職員による内部通報を促す為に、第三者専門機関を設置するなど通報制度について改めて考える必要があります。現状、職員がこうした不合理な圧力や要望を受けた場合には、上長に確認する事でその対応について協議されるものと思慮します。しかし、その上長が関わっていた場合や、同僚が談合を持ちかけられた事を見知った場合など通告者が特定されかねず、そのため現時点で庁内で行われている「公益通報制度」には課題があります。そこで、コンプライアンス相談窓口として、匿名で相談できる制度が必須です。入札を巡る働きかけの他に、議員側から政党機関紙の購読を求められたり、過日問題となった豊島区のようにパーティー券を売られたりした過去がないかどうか。本来であれば政治資金規正法に基づき規制されるべき事案ではありますが、こうした悪い慣例や些細な事も職員が相談できる様な③匿名性の高い通報制度の構築を求めます。
江東区回答③第三者機関の相談体制の構築についてです。現在利害関係者からの威圧的な働きかけや、不当な要請があった際には、上司あるいは副区長等の特別職に相談する事としていますが、組織的な体制が構築されているとは言い難い状況であると認識しています。そのため、検討委員会では、職員が相談しやすい仕組みの構築や、議員等利害関係者への対応基準の作成についても想定される検討課題の一つであると考えております。お尋ねの弁護士等の第三者期間による相談体制については、手法の一つであると考えますが、職員にとって相談しやすい窓口の設置や、利害関係者との対応する際の基準の策定等を行い、職員を不正行為等から守る体制作りについて検討して参ります。尚、職員に対するパワハラやセクハラについてはハラスメント相談窓口で相談する体制が既に設置されています。今般、公明性、公正性が求められる入札業務に関して、職員が秘密情報を漏洩したとされたことにつきましては、職員一人一人が当事者意識を持って事件の重大さを受け止める必要があるものと認識しております。今後はこの様な事が繰り返される事がないよう、検討委員会において外部有識者のご意見を踏まえながら、利害関係者からの不正行為等の働きかけに関する防止策の検討を早急に進めて参ります。
さんのへコメント③江東区の認識を改めて頂くためにも、「組織的な体制が構築されているとは言い難い状況であると認識しています」という回答が得られたのは非常に良かったです。そうした認識であるにも関わらず、相談体制が変わらなければ再発防止は望めないという点を今後も訴えていきます。
次に、⑵談合を防止する入札制度についてです。
談合とは、納税者が納めた税金を横取りする犯罪行為です。同時に、談合は密室の犯罪とも呼ばれ、内部告発或いは入札実施後の調査がなければ公正取引委員会でも見つけにくいとされています。入札実施後の調査とは、予定価格と落札価格を比較し落札率を見る事です。予定価格ちょうどの入札や、限りなく近い価格で落札された場合、情報漏洩や官製談合が疑われます。しかしながら、江東区ではたとえ入札が終わっても予定価格や最低制限価格は非開示となっており、検証する事ができません。実際に、横浜市では規模の大きい工事についての予定価格が入札後に公表されています。契約・入札の透明性・公正性を後で精査するため、④予定価格・最低制限価格を入札後に公表すべきであると考えますが、見解を伺います。
江東区回答④本区においては、工事請負契約の場合、予定価格の規模に応じて、入札前、または入札後に予定価格と最低制限価格を公表していますが、業務委託契約や物品調達等契約にあっては、入札前後共に公表を行っていません。これは、例年ほぼ同様の契約が締結する建物管理清掃や入札業務等について、予定価格や最低制限価格を公表した場合、次年度において参加事業者がこれらの価格を容易に類推することができ、公正な入札を妨げかねないという理由によるものです。8月26日に開催した契約に係る不正行為等防止検討委員会においては、予定価格等の公表のあり方は想定される課題の一つとして抽出したわけですが、公表または非公表とした場合のメリット・デメリットの比較や、他自治体の公表のルールを参考とするなど、公表の是非も含めた検討を進めていく必要があると考えています。
さんのへコメント④談合などの不正行為を完全に防ぐ入札等契約の仕組みづくりは非常に困難です。それでも、可能性を少しでも減らす事はできます。入札制度によって期待される効果を損なわない範囲で、可能な限り効果的な談合防止策について今後どのように検討されるのか注視して参ります。
次に、談合を防止する策として、私はこれまでの一般質問の場において「指名選定委員会」の設置を提言して参りました。江東区は件数の多さや調達業務の効率化などに課題があるとのことで、委員会設置に対しては慎重な姿勢を示されてきました。指名選定委員会の設置が難しいのであれば、同じく恣意的な業者選定を防ぐ方法として、総合評価方式が挙げられます。2005年4月に「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が施行され、現在江東区では予定価格3,000万円以上の工事で区が指定する工事契約において、価格点に加え施工能力評価点と地域貢献点が加算される総合評価方式を導入しています。
一方、港区では、建物清掃業務、用務業務等、区の施設等において日常的に業務を行い、人的サービスを中心とした、予定価格50万円を超える長期業務委託契約に対しても、価格競争に加え業務の品質を考慮の上落札者を決定する「特別簡易型総合評価方式」を導入しています。
⑤談合を抑止するため、工事以外でも人件費割合の高い建物管理・清掃などの請負契約に関しても、港区が実施している様に総合評価方式を導入すべきだと考えますが見解を伺います。また、その際は、障がい者雇用率や男女均等雇用の達成などの社会的要素に加え、ISOなどの第三者認証基準を含め、江東区としての達成すべき長期計画の理念を採用して下さい。
江東区回答⑤他自治体の状況を確認する作業を速やかに進めています。総合評価方式を導入した場合は、一定の基準や、条件を満たした事業者であれば自由に入札への参加を申し込む事ができる、制限式一般競争入札を採用することが基本となります。従って、入札に参加できる事業者を区が任意で選んで指名する現行の指名競争入札と比較すると、利害関係者からの働きかけを抑止する効果が期待できます。一方で、価格競争のみによらない、総合評価方式を、公正かつ透明性のある制度として構築する為には、好成績の評定方法や、価格点以外の評価点、及び具体的な評価項目の設定、さらには各評価点の重み付けなど、制度の構築に当たっては慎重な検討が不可欠であると考えております。
さんのへコメント⑤今後も引き続き慎重に検討して頂きたいです。
また、入札の開始前後に談合が行われた等の疑わしい情報があった時に、⑥区民や業者が通報できる窓口或いは入札監視委員会といった第三者機関の設置が必要であると考えます。現状、江東区においては、談合情報専用窓口がなく、公表はされていませんが、談合情報についての相談先として経理課がその役割を担っています。しかし、業者は立場上、行政側には通報・相談しづらい現状があると考えます。消費者庁でも入札談合等関与行為に関する相談窓口を設けていますが、実際に公益通報者保護制度相談ダイヤルに確認したところ、あくまでも法律に関する相談を受け付けているとの事で、談合が行われた事を知った際の通報先としては、都道府県警察或いは公正取引委員会が設置する通報・相談窓口が適当であるとの事をご教示頂きました。いずれにせよ、入札執行前或いは開始直後に談合情報が寄せられた場合においては至急の対応が必要となります。第三者通報窓口は24時間対応若しくは遅い時間まで対応できるコールセンターなどが望ましく、最近では今年8月より前橋市が談合情報専用電話を設置しました。⑥万が一行政側も談合に関わっている場合を考慮すると、行政内ではなく第三者機関である必要があると考えますが見解を伺います。
江東区回答⑥区民や事業者から談合情報が寄せられた場合、区では談合情報対応マニュアルに基づき、入札参加者への事情徴収や、経費内訳証等の確認を速やかに行い、独占禁止法の規定に違反する行為が疑われる事実が認められた時には、公正取引委員会への通報を行うこととしています。また、公正取引委員会に独占禁止法に関する通報相談を誰でも行える窓口があります。本区における談合情報の取り扱い体制の今後のあり方については、不正行為等防止委員会において検討して参ります。
さんのへコメント⑥「江東区 談合 相談窓口」で検索しても、何も出てきません。対業者には通報先として経理課を案内している様ですが、区民の立場からは何一つ情報が無い状態です。そこは改善して頂きたいと思います。
また、現状江東区にて入札制度の見直しを検討している⑦「契約・入札制度改善検討委員会」は委員が区職員のみで構成されていますが、客観的な視点が不正防止には必要なことから、学識経験者や公募を含む区民、業界団体等も委員に加え、第三者的視点を担保するべきだと考えますが見解を伺います。
江東区回答⑦本委員会は副区長を委員長として、関係部課長によって構成され、これまでは主に公共工事発注制度を対象に入札制度の適正化や、総合評価方式のあり方などを活発に議論し業界要望等を踏まえた制度の見直しを実現してきたところであります。本委員会の委員に学識経験者や区民の代表、業界団体等を新たに加えるべきというご意見でありますが、検討の内容には最低制限価格や低入札価格調査制度における調査基準価格、失格基準価格の計算方法など、厳重な取り扱いが必要な機密情報が含まれており、情報漏洩のリスクやその影響が大きいことから、現時点において委員の構成を見直す考えはありません。
さんのへコメント⑦他自治体においては、第三者としての立場である市民も検討会・委員会に入れている事例があります。入札制度では税金が使われているのに、その制度に対する区民の関心が薄い事も懸念しています。
最後に、この場を通じて、区長、区議会議員、行政職員の皆様にお伝えしたい事があります。江東区政に尽力された大先輩である渋沢栄一氏が、実業を行う上で規範とした論語の中に、「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」という言葉が記されています。これは、「間違う事が悪いのではなく、それを反省して改めない事こそが間違いである。」という意味です。間違いを起こしても、それを認めて反省し、改善すれば、救われる世の中であって欲しいと願いつつ、行政を律する立場である我々議員として区民からの信頼を失墜させた本事件は、重く受け止める必要があると考えます。
以上、再質問を保留し、江東・自由を守る会の質疑を終わります。
再質問⑧区民や業者が通報できる談合情報専用窓口の設置については、第三者機関による窓口の設置についての考えはないとの答弁をいただきましたが、現状、江東区として相談できる窓口があるとのことで、こちらを業者や区民に対しどの様に周知をされているのかお答えください。
江東区再質問回答⑧相談窓口の周知についてのご質問です。周知については、えー…機会を捉えて、あの周知をさせて頂いているところでございます。引き続き談合等の対応についても検討委員会の中で検討させていただきたいと思います。
さんのへコメント⑧周知していないから、そういう回答しかできませんよね。
****
メンッ!と総括
いかがでしたでしょうか。
「政治倫理条例」など、議員・議会側でも考えなければならない事がたくさんあるのですが、一般質問では行政側への問いしかできない(それ以外は回答が得られない)ので、あえてこうした質疑を行う事となりました。
これまで多岐にわたる分野で一般質問を行なって参りましたので個人的には「もっと子育て・福祉の分野でも質疑がやりたかったな…」という想いはありますが、こうした事件があっても行財政改革を実務レベルで唱える区議が現状私しか居ないという事もあり、大綱一点のみでやるという苦渋の決断をしました。
引き続き、初心を忘れず、江東区の子育て、教育、福祉、行財政改革に取り組んで参ります。
さんのへ あや