はじめに
今年7月に行われた東京都議会議員選挙において、点字による投票を利用して下さった区民の方やそのご友人方からこの様なお声を頂戴しました。
「投票所に行ったら職員の案内が不十分だった上に、点字器が古いもので大変残念だった。」
「あんな悲しい思いをするなら、次回投票に行くことを躊躇してしまいます。」
私は大変驚き、直ぐに江東区選挙管理委員会、東京都選挙管理委員会を通じて当事者の方と共に改善依頼をする事になりました。
本ブログでは働きかけを通じて改善する事ができた点、新しく学んだ事などをご報告します。
「点字投票」とは何か?
点字投票とは、目の不自由な方(通常の文字を書くことが難しい方)に用意された投票方法の事で、投票用紙に点字を打つことで投票ができるものです。
※手や腕の障害で直接、投票用紙に字の書けない方には、投票所の職員が代筆してくれる「代理投票」という手段があります。(もちろん秘密は厳守してくれます)
期日前の投票所を含め、各投票所においては必ず点字器具(点字を打つための道具)が配置されています。
点字投票は、
①視覚障害者である選挙人が、点字投票を行う旨投票管理者に申し立てる
②投票管理者は点字投票である旨を表示した投票用紙を申立人に交付する
③視覚障害者である選挙人は、交付を受けた投票用紙に、点字で候補者の氏名又は政党等名を記載し投票する
④投票箱に入れられた点字投票は別途回収され、点字を読み取る担当者によって判別され一票となる
こういった手順で進められます。
都議会議員選挙での点字投票は何が問題だったか?
今回の都議選において浮き彫りとなったのが、
- 投票管理者の案内不足
- 古い点字器
- 点字を打つ専用の投票用紙の裏表が判らない
という3つの問題です。
1. 投票管理者の案内不足については、事前の研修やマニュアルを再度作り直して頂く旨の同意を得ました。
再作成途中の経過を拝見しましたが、基本的な誘導の仕方から、基礎的な点字投票の知識に至るまで更に分かり易く伝わる様改善されています。
2. 古い点字器について江東区選挙管理委員会に実物を確認させて頂き、新しい点字器に買い替える事になりました!
上がこれまで配置されていた古い点字器、下が買い替え予定の新しい点字器
当事者の方に新しく買い替える予定の点字器候補をご確認頂き、値段や使い勝手共にお墨付きを頂く事ができました。
素人目には古い点字器でも見た目はまだ使えそうだと思ってしまいましたが、実際に使ってみると点字を打つ針の部分が錆びている為に用紙に引っ掛かってしまうそうです。
通常の記入式投票で、芯の折れた鉛筆が用意されていたら書きにくいですし、困りますよね。
古い点字器でもまだ使えるものについては、捨てるのではなくボランティアセンターや役所窓口への配置をご検討頂ける事になりました。
3. 投票用紙の裏表が判らない問題について、東京都選挙管理委員会に申し出を行い改善をご検討頂ける事になりました!
点字投票の用紙に関する問題の概要を説明します。
用紙に点字を打つため、通常の投票用紙の素材とは少し異なっている上に、色も大きさも少し違います。
こうする事により、筆記体を読み取る機械に用紙を入れる前に、点字の投票用紙は弾かれる事になっているのです。
下記のイメージ図は実際の点字投票用紙を見せて頂き、私が作成したものです。
さて、皆様にはこの用紙の問題点がお分かりでしょうか。
点字用紙なのに裏表が判らず、候補者名を欄内に書く(点字を入れる)様に注意書きまでされています。
因みに国政選挙や地方選挙になると小選挙区や区議・区長選と複数種類の投票となり、点字による説明が用紙に入っています。つまり、裏表が分かる状態です。
しかしながら、東京都議会議員選挙は単体選挙であった為に用紙に点字による説明がなく、裏表の判別が付かなかったとのこと。(因みに、角丸加工といって本来点字用紙の上下や左右は用紙に角丸を付ける事で判別する事ができます。)
当事者の方は、この投票用紙を渡されてもどちらが裏表か、ましてや欄内がどこなのか、説明を受けないと判らない状態となってしまったのです。
加えて、投票管理者が点字器の仕組みを理解していなければ、どちら側に用紙をセットしなければいけないのか判らなかった筈。
今回の問題について、東京都議会議員選挙の投票用紙を手配した、東京都選挙管理委員会の選挙担当の方に直接話をしに行ったところ「全く気が付かなかった。教えて頂き有り難いです。そもそも裏表がある必要があるのか、その事から見直して参ります。」とコメントを頂くことができました。
長くなりましたが、マニュアルや点字器に関しては今年実施が予定されている衆議院議員選挙までに改善が見込めるとの事でしたので、引き続き確認して参ります。
区政にメンっと総括!
投票する権利、すなわち選挙権とは憲法に保証された18歳以上の人々が持つ権利です。
身体が不自由である事を理由に投票ができなかったり、投票する意欲を削いでしまう事はあってはなりません。
皆様に投票で選ばれた公職にある身として、ソーシャルワーカーとして、皆様の権利擁護並びに社会の障壁を取り除く事に尽力して参ります。
さんのへ あや