2020年11月26日に江東区議会・第4回定例会の本会議が開催されました。

そこでは下記の①②③の議案について審議を行い、賛否が求められました。

① 江東区職員の給与に関する条例の一部を改正する条例

② 江東区会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例

③ 江東区立幼稚園教育職員の給与に関する条例の一部を改正する条例

これらは全て、江東区に勤務する公職員のボーナスを今年の12月から、支給月数を0.05月下げるというものです。

理由は民間におけるボーナスの支給状況を参考にしたとの事です。確かに2020年は新型コロナ禍で民間は過去にない苦境に晒されています。その民間の方がお支払いする住民税で給料を頂いている公務員は、基本的に民間企業の一般的な給与・ボーナス水準に揃えるものです。

しかし新型コロナに対応するために、江東区の職員の方々もまた命を削る思いで今年度を頑張ってきたのも確かです。

私はこの判断に悩みに悩みました。そして徹底的に調査を行いました。

その末に私は答えを出しました。

「江東区職員・江東区立幼稚園教育職員は止むを得ないので賛成。でも会計年度任用職員の給与減には反対

本記事ではなぜそのような答えに至ったかについて、公務員の給与制度の問題と照らし合わせながらご説明します。

特別区で働く職員の給料って誰が決めているの?

特別区と呼ばれる東京23区内に勤務する職員の給料は、一律で特別区人事委員会によって決められています。

職員の採用試験もこちらの人事委員会が実施しています。そのため23区それぞれの財政状況に関わらず、職員間の給与に差は出ないのです。

今回賛否を求められた職員の特別給に関する人事委員会勧告についての概要は、2020年10月30日付でWebサイトにアップされています。

東京都「令和2年職員の特別給に関する人事委員会勧告の概要」(https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/10/30/13.html)

そもそも会計年度任用職員って?

「会計年度任用職員」という言葉はそもそも、自治体の職員制度に関してご存知の方でなければ聞いた事すらないでしょう。

会計年度任用職員とは地方自治法第22条第2項に規定されている、非常勤で働く職員の事を指します。2020年4月から始まった新しい制度でです。

これまでパートや臨時的に勤務していた職員に対し、服務規程(守秘義務や職務に専念する義務等)を課す代わりに、休暇・福利厚生・手当の拡充等を行うべく設置されました。

無期雇用扱いの職員とは異なり、雇用期間は会計年度(1年間)となります。再任用も有りますが、江東区では最大4回までの更新を想定している様です。

非常勤としてこれまで通り雇用期間は約束できないのは変わりませんが、服務規程を課すことで給与UPや待遇向上に繋がります。正規・非正規職員間の給与や待遇の格差是正を解決する為に作られた制度と理解していただければ幸いです。

なぜ会計年度任用職員の給与減にだけ反対したのか?

東京23区職員への給料は人事委員会によって一律に定められる一方、会計年度任用職員の給料は各特別区の判断で定められています。

江東区会計年度任用職員の給与及び費用弁償に関する条例(https://www.city.koto.lg.jp/reiki-koho/reiki_honbun/g109RG00002133.html)

今回の議案は大まかに2つの考え方に分けられます。

① 職員と幼稚園教育職員の給与に関して人事委員会から勧告の通りに、期末手当の支給月数の引き下げをするかどうか

② 会計年度任用職員の給与に関して人事委員会からの勧告等に準じて、期末手当の支給月数の引き下げをするかどうか

私は、職員給与の財源は全て税金である為、その増減に対する議案は相当慎重に検討すべきだと思っています。

その上でまず①についてですが、職員と幼稚園教諭に関する給与は特別区人事委員会の定めによって東京23区で足並み揃えられているところ「江東区の職員だけ、他区と差をつける」という判断を行うに至りませんでした。

もちろん、給与の大幅減によって区民サービスの低下等が懸念される場合は断固として反対する所存です。

そして②についてですが、正規職員の給料が下げられたからといって非正規職員(会計年度任用職員)の給与も下げるべき、という考えには疑念が湧きました。

私は総合商社で正社員として勤務していた頃、業績に応じてボーナスが上下動する事は当たりまえでした。しかし、派遣社員などの非正規雇用の方のボーナスまで下げる事は行われませんでした。

正社員とは無期雇用です。本人の意思で退職を決断しない限り、会社は定年(65歳)まで雇用を保証してくれています。その代わり、会社が危ない時は賃下げやボーナスダウンを受けいれて一緒に会社を支えて欲しいという立場です。

それに対して非正規社員とは会社はいつでも契約を切れますが、その代わりに会社の業績とは関係無く仕事の内容に基づいて一定の給与・ボーナスを支払うという立場です。

本来、正社員は給料が低い代わりに契約期間が長い、非正規社員は給料が高い代わりに契約期間が短いという、メリットデメリットを相互に補完する関係です。しかし日本の雇用環境では正社員が「給料が高く契約期間も長い」、非正規社員は「給料が低く契約期間も短い」という歪な構図になっています。

そして会計年度任用職員制度はその歪な正規職員と非正規職員の格差是正の為に創設されたものです。それなのに正規職員のボーナスを下げるからといって、江東区の独自判断で一緒に非正規職員のボーナスまで下げる事は「労働政策上矛盾しているのではないだろうか?」という疑念が湧きました。

さらに江東区はこのコロナ禍において、職を失った区民に対する支援の一つとして会計年度任用職員制度を活用した緊急雇用を実施しています。

この時に採用された会計年度任用職員の方々に対してボーナスには大きな影響は無いとは思いますが、「江東区が『支援事業』と銘打ってまで実施した人事募集なのに簡単にルールを変えて良いものなのか?」と疑念が残りました。

会計年度任用職員は導入されてから間もない新たな制度です。そして日本の歪な労働環境を改善するための非常に重要な政策です。それなのに会計年度任用職員のボーナスを減らさなければいけない程、現状江東区の財政は圧迫されてはいません。

今回の議案である全てのボーナス減による予算削減額は6500万円程度です。冷感タオル配布事業にポイっと3500万円出す江東区で、6500万円のお金が区行政に大きな影響を与えるとは考え難いです。

まとめ「ただ大きいだけの行政よりも、小まめに動きよく仕事をする行政を目指す」

しかし民間の方はコロナ禍で極めて大変な思いをしています。公務員の待遇の改善を求める区民の声も大変に良く理解できます。そのため賛否は当日まで悩みに悩みましたが、上記の疑念に対して区民の皆様に説明できる程納得のいく答えが見つかりませんでした。

そのため私は「会計年度任用職員の給与減に反対」を表明しました。

私と同じく会計年度任用職員の給料減に反対を表明した議員は、共産党会派3名と無所属の中村まさこ議員のみでした。

私は会計年度任用職員制度の利点を大いに活用して行くべきと思っています。

例えば障害者雇用の面でも、長時間働けない方には会計年度任用職員を利用していただいた場合でも法定雇用率に加算されます。そのため障害者、行政、双方にメリットがあります。

コロナ禍で長期の見通しが非常に苦しい江東区の財政においては、無駄な支出を徹底的に見直し、特に区民の命や安全に関わる事業への重点的な予算の配分が必要です。

「適材適所でコンパクトだけれど、区民の皆様の生活を第一に徹底してサービスを提供できる」

これが私の目指す行政の姿です。江東区がその様な自治体になれる様、一議員として今後も徹底して議論して参ります。

さんのへ あや

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