2020年5月某日、私はとある区民の方よりご相談を頂戴しました。

「子どもを保育園から預かり保育を実施している幼稚園に転園したところ、これまで利用できていた病児・病後児保育が利用できなくなってしまった。病児専門のベビーシッターは高額で頻繁に利用できず、有給も使い切ってしまいそうで困っている。」

なぜこんな事が起きるのか。江東区議会議員として、そして私も1人の母親として大変な問題と直感しました。そして私はそれから現在に到るまで徹底的に調査し、ご相談を頂いた区民の方と共に所管課に「病児保育ルーム利用対象者の拡大を求める請願書」を提出するなど働きかけを行って参りました。

そこで判明した問題が「病児・病後児保育」は江東区役所保育課の管轄で、「幼稚園」は江東区教育委員会の管轄であるという縦割り行政です。その背景も含め、本ブログでは江東区の「病児・病後児保育」の現状と課題についてを纏めます。

病児・病後児保育とは

江東区では病児・病後児保育という制度が有ります。子育てと就労の両立支援の一環として、子どもが病気にかかってしまった際、又はその回復期に置いて区が委託する施設に子どもを預ける事ができるという事業です。現在は5施設で行われています。

これは子育て支援だけではなく、就労支援としても共働き家庭への一助となる非常に有り難い制度です。

現在この病児・病後児保育の利用対象者は下記のように定義されています。

  • 江東区に住む満1際から就学前の乳幼児のうち、「入院治療の必要はないが、安静を必要とする状態」にあり「保護者が家庭で保育できないお子様」
  • 尚且つ、認可保育園、認定こども園(入園時に、保育の必要性の認定(2号、3号の支給認定)を受けているお子様のみ)、小規模認可保育園、江東区の定期利用保育、家庭的保育事業、認証保育所、江東区の保育室、保育ルーム、家庭福祉員及び児童福祉法第59条の2に基づく届け出を行っている認可外保育施設に月極めで預けられている事

この制度は子育て支援に区分されていますが、この「保育の必要性について認定されている子どものみが利用できる」とされているため就労支援の一助ともなるのです。

しかしながら、ここに問題が発生しています。

わざわざ保育の認定を受けているのに、幼稚園児は対象外

現在江東区では2園の公立幼稚園(南陽幼稚園と豊洲幼稚園)において、「3歳児保育」と「預かり保育」という事業が実施されています。

3歳児保育は、元々4・5歳児が対象の幼稚園の利用を3歳まで広げるものです。それにより早期教育や待機児童解消、保育無償化など様々な保育ニーズに対応する事が出来ます。

預かり保育(3~5歳児対象)は、通常より長い時間を預かってくれる保育事業の事で、最大18時まで預けることが可能です。これにより保護者の様々な就業状況に対応出来る様になっています。

預かり保育は一時的に利用する分には特に申請は必要ありませんが、登録して継続利用するためには「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。これは本来、幼稚園の利用では求められないものです。しかし預かり保育を受けるために「保育の必要性の認定」をきちんと受けているのです。

これらの事業は近年江東区で導入された新しい制度ですが、大変に人気の制度です。公立幼稚園の需要が減る中でもこの2園は高い倍率となっており、3歳児保育と預かり保育の需要の高さが伺えます。

しかし新しい事業であるが故に、まだ区が把握できていない問題が眠っています。その1つがこの「幼稚園の預かり保育」と「保育の必要性の認定」の関係です。

「幼稚園の預かり保育」のためにきちんと「保育の必要性の認定」を受けたにも関わらず、「幼稚園に通っている」という理由で病児・病後児保育利用の対象外となってしまうのです。この矛盾が区民の相談方発覚した1つ目の課題です。

病児・病後児保育の利用実態

私が調査を開始した6月の時点では、江東区の病児保育利用の登録者数は5,184名となっておりました。去年の同時期(5,300名)と比較すると若干減っています。

一度利用登録をすると保育施設等を退所するまで登録は残るため、小学校へ進学したり親の就労状況が変わったり保育利用の有無が変わったり等の理由で利用者数は変動します。

また、江東区内の病児・病後児保育の稼働率を考慮すると、時期や施設によって大きく変動しますが、時期によっては一定の受け入れの枠がまだあるという認識でいる事は所管課と共に確認しています。

しかし、この稼働率の数字は病児・病後時保育が充分に足りている実態を表してはいません。「利用前日迄に申し込まなければならない」「ネット予約は使いにくい」と言った硬直的な運用の影響も否めないからです。私自身もそうなのですが、本当は病児・病後時保育を利用したいけど予約の取り方が難しいので諦めている人がいるという実態もあります。

この硬直的な運用については、調査で発覚した2つ目の課題です。

運用の課題を改善し、本当の需要まで稼働率を上げる必要があります。こちらについても江東区に対して改善を求めて参ります。

利用者枠拡大後に想定される病児・病後児利用者数

それでは私が指摘した2つの課題が解決し、病児・病後児保育の利用対象者が「保育の必要性が認められた」子どもに広げられた場合はどうなるか。

2020年9月時点、江東区の公立幼稚園・私立幼稚園に通う3~5歳児は4,673名です。そのうち「保育の必要性を認定されている子ども」は610名との事です。

この610名が利用対象者に全て含まれたとすると、病児・病後児保育の全体の利用対象者は5,794名となります。約11.7%増です。

江東区は「利用者拡大は利用率の増加に繋がり、更に予約困難な状況となってしまう」と認識しているのか、利用対象者の枠の拡大に消極的です。そのため1つ目の課題「保育の必要性の認定を受けたにも関わらず、幼稚園に通っている理由で対象外」と言う状況を放置しているのではないでしょうか。

しかしこの予約困難の問題は2つ目の課題「硬直的な運用」を改善すれば解消されます。江東区はまず「硬直的な運用」改善し、予約がしやすい環境を整備すれば、「保育の必要性の認定を受けた」子どもを全員、病児・病後児保育の対象者にする事が出来る筈です。

利用対象枠拡大に向けて

私と区民の方が提出した「病児保育ルーム利用対象者の拡大を求める請願書」に対して、江東区側の回答が届きました。そこには下記の言葉が記載されていました。

“本区では、病児・病後児保育について少しでも利用しやすくなるよう、手続きの簡素化や一部施設におけるWEB予約の導入、新規施設の開設などの利便性の向上を図って参りましたが、いただいたご意見を踏まえ、引き続き利用しやすい病児・病後児保育事業のあり方について検討を行って参ります。”

「硬直的な運用」が病児・病後児保育の壁になっている事を江東区も把握していながら、リソースを十分に割けていない様子が伝わって来ます。

この「硬直的な運用」は本当に大きな課題です。「病児保育の予約キャンセル待ちも登録したのに利用できなかった。」「もっと早い時間から病児保育を受け付けてほしい。」等、現時点でも区民の方から様々なご意見を頂いております。

さらに病児・病後児保育事業者であるフローレンス豊洲さんにご意見を伺ったところ、江東区の硬直的な運用の原因に外部業者への委託、補助金等の課題が有る事も教えていただきました。ここについても業者側の運用利便性向上を図る為、私もしっかりと対応してまいります。

病児・病後児保育事業は区民から厳しい目が向けられており、抜本的な運用改善が求められています。私は引き続き江東区に利用者拡大と改善を求め、緻密に所管課とのやり取りを進め、随時情報提供をさせていただきます。

今月、9月28日には私の一般質問が有ります。そこで本件について質疑を行う事も考えましたが、現状の様子ではたとえ質疑をしても「検討中である」としか答えられない様子でしたので、時間の関係上質疑項目には入れておりません。

その点はどうかご理解ください。

病児・病後児保育で同様にお困りの方や、ご意見等が有る方は是非私まで連絡をお寄せ下さい。

よろしくお願いいたします。

さんのへ あや

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