はじめに

江東区では2022年1月に電動シェアキックボードの実証実験が開始され、当時から原付扱いにもかかわらず「免許不要」「ヘルメット着用義務なし」「車道及び自転車道も通行可能」という法改正(特例)に不安を覚えた区民の皆様から様々なご意見を頂戴しました。

当時配布された実証実験に関する案内です

私は当時区議として区民の安全を第一に交通安全対策を呼びかけると共に、以下の対応を行って参りました。

①江東区として利用者向けに電動キックボード利用に関するルールの案内を交通対策課に申し入れ江東区HPに情報を掲載
参照:電動キックボードについて
https://www.city.koto.lg.jp/470901/kurashi/kotsu/kickboard.html

②実証実験が行われている豊洲近隣施設にてヒアリング等による現状調査▶︎歩道を走行する等の情報があり、その都度警察署に情報を提供する

しかしながら、残念な事に実証実験開始から一年経たずして電動キックボードによる初の死亡事故がお隣中央区で発生する事態となりました。
参照『電動キックボード、全国初の死亡事故 転倒の男性、ヘルメットせず』(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASQ9V6S3KQ9VUTIL041.html

この事故は任意だったヘルメットを着けておらず頭を打ちつけた事が要因となっていましたが、後日飲酒運転であった事が発覚し運転手は容疑者死亡のまま書類送検となっています。本件は単独事故ではありましたが、私は当時から“電動シェアキックボードが第一当事者(交通事故に関与した車両等の運転者又は歩行者のうち、当該交通事故における過失が重い者)の事故が起きるのは時間の問題”と考え、ルールの見直し・規制強化を求めていました。

ルール改正とその後の対応について

僅か半年間という期間で行われたレンタル事業実証実験の翌年1月、新ルールとして同年7月から電動キックボードは特定小型原動機付自転車として分類され、「16歳以上であれば免許不要」「時速6キロ以下なら歩道も走行可能」「走行中のヘルメット着用は努力義務」となる旨が公表されました。

この新ルールに則る形で電動シェアキックボードのレンタル事業者も安全基準を満たした車両のレンタルを新たに開始したものの、都内では法改正後も電動キックボードによる事故が発生。

警視庁ホームページ(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/tokuteikogata.html)より抜粋

こうした状況を踏まえ、2024年10月に地域政党 自由を守る会として決算特別委員会の場で警視庁に対し以下の質疑・要望を行いました。

質疑⑴2023年7月、改正道交法施行で電動キックボードの規制が緩和され、最高時速20キロ以下、長さ190センチ以下、幅60センチ以下など一定要件を満たせば「特定小型原動機付自転車」と分類され、16歳以上は免許なしで運転可能となりました。規制緩和後の1年間、警視庁として都民の安全を守るためにどのような対策を実施してきたかを伺う。

回答⑴警視庁では、飲酒運転や歩道通行などの悪質・危険な違反行為に対する指導取締りを強化するとともに、交通ルールの周知や交通安全教育、事業者等と連携した広報啓発などを実施しております。

質疑⑵一方で電動キックボードが関係する交通違反や事故が多発しています。警察庁によると、昨年7月から今年5月、信号無視などの交通違反の摘発が2万1,562件あり、事故は190件起きました。東京都内では1~5月、電動キックボード利用者が最も過失が重い「第一当事者」となった人身事故が56件発生し、そのうち25%にあたる14件が飲酒運転だった。この飲酒運転の割合は1%程度とされる乗用車やバイクと比べて突出しており、気軽に乗れることが飲酒運転への意識を低下させているという見方があります。世界最大手のライム社が本年8月19日より都内6区(渋谷、新宿、世田谷、目黒、豊島、中野)で特定小型電動機付自転車サービスを開始し、利用者の増加に伴い今後更に多発するであろう事故からどのようにして都民を守るのか、取り締まりや啓発活動について今後の見解を伺います。

回答⑵警視庁では、引き続き、悪質・危険な違反行為に対する指導取締りを行うとともに、交通ルールの周知や交通安全教育、事業者等と連携した広報啓発などを実施してまいります。

質疑⑶日本政府は規制改革推進会議で押し切るように、電動キックボードの規制緩和並びに大手企業の参入を進めています。一方で警察による厳しい取り締まりを行っても安全が守りきれていない現状があり、日本の交通安全が脅かされていることに対し都民から不安の声が上がっています。2018年にシェアリングサービスを導入したフランスのパリ市は昨年2月に事故の多発からサービスの存廃を問う住民投票を実施し、廃止が大多数をしめたため同年9月から廃止となっています。世界の潮流に日本は逆行している中で、警視庁としてより厳しい対応を求めます。電動キックボードと同様に、販売店を通さず個人でも購入が可能となっているペダル付き原動機付自転車に対する安全対策も急務です。ペダル付き原動機付自転車はペダルがあることで「自転車のルールで走れる」と考える利用者もいますが、道交法上は原付バイクと同じ扱いで、公道を走るには運転免許やヘルメットの着用が必要です。ただ、「電動アシスト自転車」として販売されているケースもあり、ルールを知らずに運転している人も多いとされています。警視庁として、今後、具体的な取組と安全対策について伺います。

回答⑶当庁では、事故や違反の多い若年層などに対する交通安全教育、SNS等による情報発信や販売事業者に対する安全指導を実施するとともに、無免許運転などの悪質・危険な違反行為に対する指導取締りを継続してまいります。

メンっ!と総括

質疑の中でも触れましたが、実は電動キックボードのみならずペダル付きの原動機付自転車(通称:モペット)の事故やマナー違反も指摘されています。
それらの交通事故件数について調査したところ、後日警視庁側より以下の回答がありました。

■ペダル付き原動機付自転車(通称:モペット)が第一当事者の交通人身事故件数(東京都内)

   令和5年(1〜12月)   13件(内、2件が飲酒事故)
   令和6年(1〜9月末現在) 16件(飲酒事故はゼロ)

■特定小型原動機付自転車(通称:電動キックボード)が第一当事者の交通人身事故件数(東京都内)

  令和5年(7~12月)    55件(内、14件が飲酒事故)※道交法改正施行後の7月以降をカウント
  令和6年(1〜9月末現在)  142件(内、38件が飲酒事故)

都内におけるモペット並びに電動キックボードの事故件数はいずれも大幅に増加している事が判明しました。
合計で見ると、現在は東京都内で17.5件/月の人身事故が発生しており、
電動キックボードに至っては、起こした人身事故の内、飲酒事故が占める割合が4件に1件と高いこともわかります。  

諸外国では規制が行われている一方、こうした乗り物を取り扱う大手のレンタル事業者(例:米国Lime社(パリ市では利用禁止に伴い撤退した企業))が、新たに日本に参入してきている現状もあります。

また、大手事業者であるLuup社には、都民ファーストの樋口たかあき現千代田区長の父親である元警視総監が監査役に就任している事が明らかとなり、「天下りではないのか」という批判もSNS上で見受けられました。

レンタル事業者は「移動インフラの利便性・安全性」を謳い普及を行っていますが、ルールの順守は利用者任せ、取り締まりや事故防止、安全運用の徹底は警視庁任せで、事故も右肩上がりに増加し続けています。
行政が介入して移動インフラの支援をすべき交通弱者とも呼ばれる高齢者、障がい者や、小さな子供を連れた方々を危険にさらしてまで、急激な規制緩和を進めることで恩恵にあやかれるのは誰なのでしょうか?一部の方の利便性を追求するあまり、全体の安全性が損なわれるようなことはあってはならないと考えています。
国に対して法改正・規制強化を訴え、これが実現できるように、各地の皆さまと超党派での取り組みを進めていく必要性を感じています。

区民の皆さまへのお願いです。危険運転やルール違反を目撃された際には管轄の警察署への通報にご協力頂けますと幸いです。
緊急性が高い場合は110番通報。そうではない場合は管轄の警察署まで。
深川警察署:03−3641−0110
城東警察署:03−3699–0110
湾岸警察署:03−3570−0110

さんのへ あや

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