はじめに

今からちょうど2年前に流れたニュースを覚えている方は居られますでしょうか。

『職員感染で不燃ゴミ収集中止 台東区 東京コロナ情報(2021年8月16日)』
https://www.asahi.com/articles/ASP8J61NRP8JUTIL00T.html

ごみを出す行為は、人々が生きる上で当たり前の行為ですが、コロナ禍という異常事態の中で、それが当たり前にできる環境の有り難さを改めて思い知らされることとなりました。

同時に、江東区でも収集の中止を選択しなければならない状況は避けなければならず、リスクを負いながらも、ごみを収集して下さる職員の安全確保並びに人員の確保が急務であると感じました。

その後調べると、江東区は技能系職員(収集を行う職員)の新規採用が過去8年間行われていないという実態が分かりました。23区内でも、ここまで採用を行なっていないのは江東区だけです。

これには"退職不補充の方針"という大きな壁があり、江東区としては退職者に代わる新卒者の採用を抑制する代わりに、委託の比率を上げて担い手不足を解消する方針を打ち出していたのです。

清掃事務所の職員の仕事は、ごみを収集するだけでなく、地域との信頼関係の構築や、子ども達へ環境学習を行うなど多岐にわたるものである。

退職不補充の考え方で、区民生活に永続性を持たせる事ができるのか?

担い手不足の解消に、女性の活躍も期待できるのでは?

この様に考えた私は、2023年2月28日に行われた予算審査特別委員会の場において、退職不補充の考え方や女性職員の採用について質疑をしました。(詳しい議事録はデータベースからご確認頂けます。)

その際も有意義な議論を行う事ができましたが、どこかで私は「ごみの収集作業を行なった経験がないのに、収集をする側の方の働く環境を語れるのだろうか。机上の空論になっているのでは?」と感じたのです。

私自身が収集体験を通じて学ぶ事によって、今後議会でもより具体的な提言ができるのではないかと考え、「清掃事務所の収集体験をさせて欲しい。」と申し出ました。

そして、コロナ禍を経て、先日ついにその機会を設けて頂くこととなりました。

職員体験の内容について

2023年8月23日(水)に、私は以下の内容で現場体験を行いました。

07:20〜07:40 集合・朝会(準備体操など)
08:00〜11:30 収集車出庫・午前作業
11:30〜12:30 昼休憩
12:30〜14:00 午後作業
14:00〜14:30 作業終了・洗身
15:00 終了

そして、新大型特殊車(運転手1名+作業員3名)のチームに加えて頂き、燃やすごみの収集運搬作業を行いました。

具体的な作業内容には、担当地域でごみを収集→夢の島 清掃工場へ運ぶという往復の移動が含まれます。
私は午前と午後併せて合計4往復しました。

新大型特殊車は清掃車の中で一番大きい車両で、最大で3トンのごみを収集する事ができます。
また、江東区が直営で所有する清掃車は、小型プレス車と軽トラックの二種類のみとなります。

作業中の服装については、酷暑の中でも、作業員は通年で長袖長ズボンを着用しなければなりません。腕まくりも不可との事でした。

気温33℃の中で腕まくりもできないことに不安を覚えましたが、収集車後方にあるバケット部分にごみを投入し圧縮する場面では、ごみに含まれる水分やごみの破片が身体に向かって飛んでくるがあり、確かにこれは素肌を出さない方が安全だと体感しました。

熱中症への不安もありましたが、看護師としての異例の経歴を持つ清掃事務所所長の配慮が素晴らしく、作業員の皆様の健康と安全への配慮が至る所で感じられました。

作業員の皆さまへ用意されている塩飴や塩タブレット

また、作業員の方の飲み物代も区の予算として出すべきではないかと感じました。(作業員の皆さまは都度実費でご負担頂いています。)

印象的だった「ごみの出し方」について

「ごみ出しは、人となり」。これは、足立区出身でごみ清掃員として勤務されているお笑いコンビ マシンガンズの滝沢さんがあだち区報で紹介されていた言葉です。

ごみの出し方に人間性があらわれるという表現ですが、今回私は燃やすごみ個別収集コンテナ収集の両方を経験し、まさにその通りだな…と感じる事が多々ありました。

特に印象的に感じた「こんな風にごみ出しをしてくれたら助かるし、嬉しい!」という点と「こんな風にごみを出されたら大変だな…」という点を紹介させて頂きます。

全般的・基本的なごみ出しのルールにつきましては、江東区の公式ホームページをご確認下さい。
『江東区 資源とごみの分け方・出し方』
https://www.city.koto.lg.jp/388010/kurashi/gomi/kate/7348.html

  • 戸建てや小規模マンションにお住まいの方(個別収集編)
ごみを手で掴み収集車に積み込む様子

「素晴らしい!」と感じたごみの出し方

個別収集では、ごみ袋を一つ一つ手作業で収集車に積む作業が行われます。
その際に、中のごみが散らばらない様できる限りごみ袋の結び目部分を掴んで運び入れます。

そんな中、小さめのごみ袋が二つ、結び目で纏められているものを発見しました。

イラストで描いてみました。実際は二つの袋の結び目が一緒に結んであった様なイメージです。

小さめの袋に分けられていても、一度に複数のごみ袋が掴めるし、燃やすごみとしての分別もしっかりされていて、非常に有り難い配慮だなぁと感じました。

また、今回収集させて頂いた地域はカラス避けネットがしっかりと被さっている場所が殆どで、ごみが散らばっているところが無く大変有り難かったです。

中には「暑い中いつも有難うございます」という清掃員宛のメッセージが貼られたごみ袋も…その気持ちだけでもとても嬉しく感じました。

「もう少し配慮が必要…」と感じたごみの出し方

ごみ袋の結び目が下向きになっていたり、結び目が緩いと、ごみを運び入れる際に中のごみが散らばってしまう事がありました。そんな時は、細かなごみも手作業で拾い集めなければなりません。その為、ごみ袋は中身が漏れない様しっかりと結んで頂けると運ぶ時に大変助かります。

また、資源ごみとして収集できるはずのペットボトル、プラスチック包装、区報などの紙資源の多くが、燃やすごみと一緒に出されているところを目撃しました。

収集した後に分別する事はできませんので、ごみの分別と資源化にご協力頂けますと幸いです。

  • 大規模マンションにお住まいの方(コンテナ収集編)
コンテナのごみを清掃車に入れる様子

「素晴らしい!」と感じたごみの出し方

多くの大規模マンションでは清掃員の方や管理人の方が常駐されており、ごみが管理され、コンテナを収集する際に手助け頂けるのは非常に有難かったです。

また、日時を問わずごみを出すことができるからか、資源ごみが可燃ごみに混じっている様子も少なく感じました

分別にご協力頂いた後に、透明〜半透明のごみ袋を使用して頂けると目視できるので助かるなぁと個人的に感じました。

「もう少し配慮が必要…」と感じたごみの出し方

コンテナ収集は機械による操作で行うため、一見すると楽なのですが、私はとても怖かったです。何故ならば、中に危険なごみが混じっていないかを素人目に確認する事が難しいからです。

また、燃やすごみに”水分が多く含まれているもの”が混じっている事が多いと感じました。

こうしたものは、収集車で圧縮する度に汁(あえてここでは汁と書きます・・)があちこちに飛び散るだけでなく、焼却処理をする際に多くのエネルギーを消費してしまうと言われています。

作業員の方はメガネやゴーグルを着用されている方もおられますが、暑い中の作業で曇ってしまうため、着用していない方が殆どです。飛び散った液体やものが目に入り、昼休みに病院に通う経験をされた作業員の方も多く居られます。

水分の多い生ものの処理については、ディスポーザーを利用して頂くか、設置がない場合、コンポストや家庭用電動式生ごみ処理機の購入費を助成しておりますので、こちらも併せてご利用ください。

また、ビーズクッションや羽毛布団なども一緒に燃やすごみとして出してしまうと、中身が飛散してしまうとの事でした。ビーズクッションは粗大ごみとして廃棄して頂き、羽毛布団はリサイクルが可能です。

言わずもがな、焼き鳥の串などは袋から飛び出して、作業服や手袋を貫通して人体に刺さってしまいます。牛乳パックや新聞紙等に包み、テープで止めて捨てて下さい。

「このごみを出すと、収集する時に中身が飛び散るだけでなく、作業する方に怪我をさせてしまうかもしれない」という点も是非ご配慮頂きたいです。

両方のごみ収集を経験して感じたのは「環境や収集する人の事を思い遣るごみ出しは、どこかで誰かに絶対感謝されている」という事です。

反対に、「きっとバレないだろう」「面倒だから適当で良いや」という感覚で出されたごみは、確実にどこかで誰かを危険に晒しています。

引き続きごみの分別と「このままごみを出したら、清掃員の人、困らないかな」という少しの配慮で、当たり前にごみが出せるという環境を少しでも長く継続させる事ができます。是非ご協力頂けますと幸いです。

女性職員が活躍できる現場へ

昨年足立区内にある雇上会社が女性だけのごみ収集チームを結成し、ワーク・ライフ・バランスを取りやすい職業であることが注目されつつあります。

江東区においても、今年の6月より女性チームによるごみ収集の作業検証が行われる運びとなりました。

夢の島の清掃工場で見つけた女性作業員用のお手洗いです

しかしながら、女性が活躍できる環境整備は未だ改善途中です。
江東区の清掃事務所には女性職員専用のお手洗いが未整備だった為、現在改装工事で新たに設置される予定です。しかし、委託が進められている雇上(ようじょう)会社の方が休憩する建物は老朽化が進んでいる上に、こちらには未だに男女共有のお手洗いしかないとの事です。

建て替えの際には、女性用のお手洗いや休憩所に加え、昼食や軽食が購入できる場所や子どもを預けられる保育施設があると、尚働きやすい環境となるのではと考えました。

例えば区立保育園のスポット延長保育は7時30分以降となりますので、朝7時30分の出勤時刻には間に合いません。これは清掃事務所に勤務される方に限った事ではないですが、こうした早朝勤務をされるお仕事をしながら子育てをするケースでは、ベビーシッター等他の保育サービスを利用しない限り相当厳しい現場だと思います。

こうした改善点については、職員の皆様からもヒアリングさせて頂きたいと思います。

メンっ!と総括

普段から体を動かす事に慣れていた私でさえ、午前の作業を終えた頃にはすっかり顔が真っ赤になり、翌日足腰はひどい筋肉痛になりました。

1日だけではありましたが、日々どんな思いをされながら収集作業をされているのか、少しでも知る事ができたのは非常に有り難く貴重な経験となりました。

日頃ごみを出す側として「この出し方でいいのかな…?」と疑問に感じられている方は、是非コメント等で率直なご意見・ご感想を頂戴できますと幸いです。直ぐに確認させて頂きます。

また、ブログにはまとめ切れない程の多くの学びがありましたので、他の区議会議員にも体験して頂きたいと思います。

今後は議員研修の一環として清掃事務所の収集体験を行う事を議会に提案して参ります。

最後に、貴重な機会をご提供頂き、ご協力頂いた清掃事務所職員の皆さまに心から感謝申し上げます。

さんのへ あや

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