はじめに

2022年3月3日(木)に行われる令和4年度予算審査(総務費)にてスケートボードパーク建設に関する質疑を行います。

そこで、論点整理も兼ねて、情報開示請求等の調査で明らかになった事を含め「私がなぜ江東区立スケートボードパーク建設に納得できないか」「唯一納得できる点があるとすればそれはなにか」という2点をまとめていきたいと思います。

建設費用やどこに建設予定かなどの予備知識については、下記動画をご参照頂けますと幸いです。

江東区立スケートボードパーク建設に関して納得できない点

その1:誰がどれほど必要としているのかが不明瞭であり、利用者の見込みが立っていない

江東区がスケートボードパークを新設を検討する背景として「スケートボードのできる区立施設がない」「東京2020大会を機にスケートボード競技への関心が高まっている(江東区出身の選手がスケートボード競技で金メダルをとった事に起因)」「区民からスケートボードの利用ができる場所の整備が求められている」「有明アーバンスポーツパークの残地が求められている」としています。

スケートボードのできる区立施設が無いという点は事実でありますが、民間企業が運営するスケートボードパークが2カ所(RAIZIN SKY GARDENTokyo Sport Playground)、また東京都が残置を決定した有明アーバンスポーツパークの計3カ所あります。(Tokyo Sport Playgroundは無料で利用できるが営業はR4.9.30迄)

この背景の中で気になったのが「区民からスケートボードの利用ができる場所の整備が求められている」という点です。

2018年4月から2021年11月の間に江東区(区長への手紙、江東区教育委員会、庁舎窓口苦情・要望受付、各課へのweb問い合わせ等)に寄せられた「スケートボードに関する区民の意見」(計131件)を調査分析することにしました。以下は調査結果となります。

<以下、スケートボードの利用場所を求める主な意見の抽出>

■小松川公園から荒川の土手の下にスケートラインを作ってはどうか。来待川公園もよい。亀戸公園も人が少ないので有効活用するべき。
■夢の島スケボーパークをぜひ作ってほしい。税金を使うことにもなんの問題もないと思う。
■公園内にローラーコースをつくる、時間や時期を決めてスケートボードの利用を許可する、首都高下など暗くて治安が不安な場所にあえて人の流れをつくるべきでは。
■東大島あたりにスケボーパークを作ってあげれば練習できるんじゃないかと思うんですが。日夜解放してあげられる公園を江東区東西南北につくってほしいとお願いです。
■既存公園内に滑走可能エリアの確保を早急にお願いしたい
五輪スケボー会場をメモリアルパークにすることに賛同します。
有明アーバンスポーツパークの恒久化を求める。
■Tokyo sport play groundの継続をお願い致します

江東区に寄せられた意見の大半がマナー違反者に対する注意啓発を求めるものでした。また、利用場所を求める意見の内訳も、公園への併設や、既存施設の再利用を求めるものが殆どでした。

夢の島にスケートボードパークを新設する政策に賛同する意見は1件のみで、それ以外に「夢の島に作ってほしい」という意見はありませんでした。

ここから分かるのは、江東区がスケートボードパークの建設を検討し始めた段階では「夢の島」にスケートボードパークの「新設」を求める区民の声は無かったという事実です。

そのため、どれほどの利用者が見込めるのか(需要があるのか)が分かりません。

私が調査の為に訪れた浦安市運動公園スケートボード場(有料)では、コロナ禍の規制がなければ土日は市内外の利用者合わせて100人以上が利用されているとのことでした。

江東区が見込む利用者数については具体的に示されていない為、質疑で確認していきたいと思います。

その2:マナー啓発に関する具体的な方向性が示されていない

集約した区民の意見からも分かる様に、マナー啓発とセットで整備を進めてほしいとする「条件付き賛成」の意見が一定数ありました。

また、スケートボードパーク設立の目的として「スケートボード教室の開催やマナー啓発に取り組むことで、スポーツとしてのスケートボードの認知度アップを図るとともに、東京2020大会のレガシーとして競技者のすそ野を広げ、今後の発展につなげていく」と明文化されています。

江東区内各地域においてスケートボードのマナー違反に関する要望・問い合わせが継続していることから、令和3年度補正予算(8号)でも「マナー啓発をどの様におこなっていくのか」という点で議論が行われました。

因みにここで示すマナー違反行為とは、騒音、公園ベンチ等の破壊、歩道や公園などスケートボード利用が禁止されている場所での使用です。

今のところ(ブログ執筆時点で)江東区から示されているマナー啓発の手法は「SNS、区報、ケーブルテレビ等のメディアで周知」「注意喚起等看板設置」でしたが、新木場駅から夢の島間の道でのプッシュ行為を控えてもらうための整備も含め、啓発の効果まで示されている具体的なものはありませんでした。

果たして、上記で示している様なマナー啓発+スケートボードパーク新設で、マナー違反者を減らすことができるのでしょうか。江東区としてスケートボードをスポーツ競技として盛り上げていくのであれば、ここの議論はあらかじめ深めておく必要があると考えます。

また、ごみ・たばこ等の発生、スケーターを守る保護具の着用をどの様に促すか等についても意見交換会の中で課題として挙げられています。

その3:利用料をとるのか、無料とするのかが決まっていない

公共施設を有料・無料とすることにそれぞれメリット、デメリットがあり、関係者や庁内検討会の資料を確認する限り様々な議論が行われている様です。

また、地域にあるスケートボード場の利用料もそれぞれであり、公立であっても「公園施設」としての位置付けであれば無料のところが多い様です。

今後の維持コストにも関わる話であるにも関わらず、予算審査の時点で「まだ決まっていない」としているのです。

その4:建設を急ぐ理由が「機運を逃さない」であるにも関わらず、機運を表すはずのクラウドファンディングが十分に集まっていない

江東区は令和4年11月中にスケートボードパークを開設するとし、全庁を上げて急ピッチで取り組んでいる旨を説明しています。急ぐ理由について記者会見などでは「東京2020大会で醸成された機運を逃さない様に」と説明されていましたが、庁内検討委員会の資料を見る限り「山崎江東区長の意向が強い」ことが分かります。

以下、青塗り箇所は理事者個人名のため伏せさせて頂きます。黒塗りは行政側判断で非開示となったものです。

令和3年10月14日スケートボード場設置に関する検討会資料より
令和3年10月14日スケートボード場設置に関する検討会資料より

さらにクラウドファンディングを活用し建設費用の一部に充てるという事をしていますが
目標金額:50,000,000円に対し、2022年3月2日現在の寄付金額は1%も満たされていません。

https://www.furusato-tax.jp/gcf/1593

寄付行為は尊いものであり、その行為事態を批判する気は全くありません。

しかし、スケートボード競技に関する機運が高まっているのであれば、もう少し集まっても良いはずでは…と思います。

寄付期間は2022年10月31日迄とされていますので、引き続き動向を注視していきたいと思います。

その5:夢の島という埋め立て地を利用することにより、日陰などの屋根を作ることができない

庁内検討会の資料に示されていたのは、夢の島は元々埋立地であり、土を掘る行為ができないという事実でした。つまり、土の上に物は乗せられるけれど、地盤が弱い為地中から背の高いものを設置する事ができません。

認められているのは地盤を固める行為のみということで、コンクリートによるスケートボードパーク設置は理にかなっています。しかしながら、建設予定地周囲に日陰が少なく、夏場はコンクリートの照り返しにより猛暑が予想され、熱中症予防の観点から日陰の設置が必要と考えます。

既に木が生えているから日陰を作る必要はないと思われましたが、実は予定地周辺に生えている樹木は全て野生のものであり、根が深くない為台風19号の際にはたくさんの木が倒壊してしまった経緯があります。
よって、整備に合わせて樹木も伐採する可能性が非常に高いです。

その6:東京都が設立を進める有明アーバンスポーツパーク(旧:オリンピック競技会場)に初心者コースが設立される

スケートボード競技会場として使用された有明アーバンスポーツパークは上級者向けの仕様となっており、そのため競技を初めて間もない初心者〜中級者が練習する場所がないとして、この初心者〜中級者向けにスケートボード場を整備する必要があるとしていました。

ところが、突如として東京都が有明アーバンスポーツパークに初心者〜中級者向けのコースを整備すると発表しました。

有明アーバンスポーツパークのスケートボード施設は東京2020大会時に使用された施設を活用し、
初心者エリアも一定程度は設ける予定ですが、上級者、競技者が十分技能を発揮できる施設となり
トップレベルの大会なども開催可能とのことでした。

上田令子東京都議会議員を通じて調査したところ、東京都は有明アーバンスポーツパークの整備費としておよそ4億円を投じるとしています。

また、有明アーバンスポーツパーク近くにはゆりかもめ駅があり交通の便が良いことや、有明ガーデンなど商業施設も充実していることから多くの利用者が見込まれます。

夢の島に整備して利用者に訪れてもらえるのかどうかを慎重に議論し直す必要があると考えます。

その7:スケートボードをやらない区民にとってのメリットがない

それを言ってしまうと元も子もないでしょう…と思われてしまいますが、実際にスケートボード場の整備にメリットを持たせることができた地域の事例があります。

「除雪車基地をスケボーパークに 出動で空いたスペース有効活用」(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20211214khn000049.html

せっかくお金をかけて整備するのであれば、他の区民の皆様にメリットがある様な提案をおこない、協議したいと思います。

その8:夢の島競技場周辺の駐車場が出入りしづらく、改善が見込めない

夢の島競技場や野球場に車で来場された事がある方はご存知かもしれませんが、最寄りの駐車場は細長い形状であり出入り口が1つしかない関係で、大会終了後には渋滞が発生していることがしばしば見受けられます。

駐車場料金は30分100円(3時間半以降1時間100円)となっていますが、有料であることからもなるべく時間内に出たい方が多く居られるのが現状です。

スケートボードを利用される方の移動は電車(新木場駅からは徒歩)、車、自転車が想定されます。お金をかけてスケートボードパークを整備するのであれば、この駐車場も整備するべきではと江東区側に求めましたが、東京都の所有する土地であり、出入り口を明治通り側に追加することは難しいとのことでした。

その9:建設費のみならず多額の維持コストがかかる

明確な金額は示されておりませんが、他地域のスケートボードパークを調査すると、コンクリートについては温度が上がると膨張して下がると収縮するということで、それが元でひび割れ等を生じる場合が多数報告されています。

また、技を決めるときにコンクリート部分には負荷がかかるため、メンテナンス費としての維持コストがかかる事が懸念されています。

江東区がどれほどの金額を想定しているかについては質疑して参ります。

江東区立スケートボードパーク建設に関して納得ができる点

その1:夢の島の“デッドスペース”を活用することができる

動画を見て頂くと分かりますが、スケートボードパーク建設予定地はサイクリングロードが整備されているものの殆どと言っても良いほど利用者がいません。

街灯はありますが夜間は非常に暗く治安が懸念されている場所でもあるため、この場所にスケートボード場ができることで人の出入りが発生することは望ましいと考えます。

その2:騒音問題が起こりにくい場所である

なぜ江東区は夢の島を選んだのか?という疑問が湧きますが、夢の島に立てる江東区としての最大のメリットは「騒音問題が起きにくい」事であると考えます。

動画でもご紹介させて頂きましたが、スケートボードパーク建設予定地の大半が運河に面しており、さらに運河の向こう側は倉庫などが並んでいます。半径400mにマンションもありますが、建設予定地でスケートボードで音を発生させてもマンションで音は聞こえないという実証実験もされています。

風向きも影響するかと思いますが、実際に現地を訪れた感想として「運河を通る小型船や電車の音の方が大きく、スケートボードの音はさほど気にならないのでは」と思いました。

その3:整備されるコースは事前にスケートボード競技完成者からヒアリングを行なっており、ストリートを再現した「滑りたい!」と思わせる仕様になっている

江東区はスケートボード競技関係者からのヒアリングを行い、滑っていておもしろいと感じるコース(よりストリート近いコース)を作る努力をされています。これにより、区外からも多数のボーダーが利用されることが期待されます。

詳しい施設の整備については公表されていないのですが、関係者からは「しいて言うならば碧南スケートボードパークに作りが似ている」とのことでした。庁内調査調べでは、碧南市のスケートボードパークはスケーターからの人気が高いそうです。

まとめ

江東区は関係者や庁内で検討委員会を開催し、様々協議をしているものの
2億円とそれ以上の予算(今後維持管理コスト含め)を承認できるほど未だ何も決まっていないというのが現状です。

質疑の場では、誰がなぜ作りたいと思ったのか、責任の所在を明らかにすることと、上記で不明だった点について追及して参ります。

また、このブログ記事を通してスケートボード利用者ならびに関係者を批判する意図は一切ありません。

江東区が多額の税金をかけて進める事業を、二元代表制を担う一地方議員として精査し、税金の使い道として正しいものであるのかを議論する為の調査を実施していることご理解頂けますと幸いです。

江東区議会議員
さんのへ あや

江東区立スケートボードパーク建設に関する論点まとめ” に対して1件のコメントがあります。

  1. 横島 より:

    江東区のスケボーパーク建設の経緯や予算今後の収支等が気になり色々調べたところ、さんのへ様のサイトにたどり着きました。
    野球やサッカー等と比べると非常に競技者人口が少ない中で、江東区民の税金をそのごく一部の競技の為に使う事が非常に納得がいきませんでした。
    区へ問い合わせたところ以下のような回答があり更に疑念がわきました。
     昨年開催された東京2020大会ではスケートボードが正式種目として採用されており、本区ではスケートボードをスポーツとしてとらえ、
     夢の島総合運動場内に新たなスポーツ施設としてスケートボードパークを整備いたしました。  
     そのため、既存の夢の島競技場や野球場と同様、多くの方にご利用いただけるよう、周知等を図ってまいります。
     なお、区立施設であるため区費で整備しておりますが、同時に、クラウドファンディングによる寄附金を活用しております。
     お寄せいただいた寄附金はスケートボードパークの整備費に充てさせていただいており、
     大変多くの方からの同意や支援をいただけたものと考えております。
     また、可能な限り区財政の負担を軽減するため、
     日本スポーツ振興センターのスポーツ振興くじ助成金や東京都の補助金等の活用も図っています。
     江東区地域振興部スポーツ振興課
      スポーツ振興係

    ◆疑念点
     ・たかだか1回五輪で開催されただけで、今後も正式種目として存続されると思うような楽観的思考の点
     ・圧倒的に競技者が少ないのにもかかわらず、野球等との同様の扱いをしている点
     ・まるで多くの賛同を得、多くの寄付金で賄ったような書き方をしているが、実際には建設費用の1割にも満たない寄付だった点
     ・今後の運営に関する費用についてきちんと見通せているのか不明な点
     ・区からの息子の幼稚園・保育園に関する調査で返信用の封筒には切手が貼っておらず、「一部の人のために税金を使うわけには行かない」と言う回答であったのにもかかわらず
      もっとごく一部の人のために税金が投入されるという点

    税金の使い道はきちんと調査、計画を行ったうえで行ってほしいと切に願います。

横島 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA