2022年(令和4年)9月20日 第3回定例会(第11号)

◯10番(さんのへあや議員) 
 江東・自由を守る会、さんのへあやです。
 今年3月にあった江東区の清掃管理業務委託契約に関する指名競争入札をめぐり、情報を漏えいさせた見返りに現金30万円を受け取ったとして、江東区議会前議長の榎本区議があっせん収賄容疑で逮捕・起訴されました。江東区議会として、一刻も早い区民からの信頼回復と、議員としての政治倫理の確立に努めなければなりません。
 江東区のみならず、国、地方議会、業者、契約担当者間における汚職事件が相次いでいます。これらの事件の温床となる原因は、大きく分けて2つあると推測します。1つ目は、「談合や政官業の癒着」、2つ目は、「裁量性・恣意性を残した入札・公共調達制度」です。私は議員となって以降、不正癒着を根絶するための行財政改革として数々の改善提案をしてまいりましたが、このような事件が起こってしまったことは誠に許し難く、悔しい思いです。本来議員として持ち得るべき倫理感を持たずして、議員としての権限を自己の利益追求に利用するなど言語道断です。しかし、不祥事が起きたときこそが再発防止策を講じる好機であり、二度と同じことを起こさせないという徹底的な再発防止策を講じるべく、年に一度の貴重な一般質問の場を使って、以下、提言させていただきます。
 まず初めに、税金と職員を不正行為から守る行政制度、その仕組みづくりについてです。
 住民や事業者からの要望を受けて、行政に対し提言することは大切な議員活動の一環であります。しかし、これらは議員としての権力を利用した口利き・あっせんと言われる違法行為と紙一重であるとも言えます。
 行政職員を議員等の不当な圧力から守り、情報公開に資するためにも口利き記録制度が必要です。口利き記録制度とは、要望者の氏名、要望内容、行政の対応等を記録し、要望等の記録・公表制度の創設によって、議員等からの不合理な要望を抑止し、モラルハラスメントから職員の立場を守る制度です。不正とは無縁の議会活動を務める議員にとっても、この制度の創設は好都合です。
 榎本元議長に関する事件が発生した後に、この記録制度創設に関して理事者側へ提案したところ、江東区不正行為等防止検討委員会にて「要望・申し出等の記録及び公表する仕組みの構築」として、前向きに協議されていると伺っています。
 この仕組みは、要望対象者、要望内容、行政の対応について、一定の基準を設けて実施がなされます。要望者は区議会議員のほかに、江東区行政に対し権限を持ち得る人物、すなわち区長、副区長、国会議員、都議会議員も含める必要があります。
 また、記録する要望内容については、住民からの要望、入札に関する要望、団体としての要望、資料作成など資料提供に関する要望の主に4つに分類できますが、入札に関する要望は、事件性・違法性が特に高いとされているため、記録として残すことが必須であると考えます。
 職員を圧力から守るために有効な手段として、口利き記録制度に関する見解を伺います。
 さらに、職員に対する外部者からの圧力・要望等の実態を把握するためにも、全庁を挙げて匿名によるアンケート調査を実施し、原因究明に努める必要があります。
 横浜市では、2003年に不祥事が発覚した際、市職員ら5,500人余りを対象に不合理と感じる要望等を受けたことがあるかどうかについて調査をしています。この調査の結果、部課長級以外の係長級の職員が、過去に不合理な要望等を受けたとする割合が38%に及んでいます。
 江東区の不正行為等防止検討委員会では、管理職である部課長のみに対してアンケート調査が実施されているとのことですが、管理職以外の職員に対しても不正が行われる可能性を一掃するためにも、全体調査の実施を要望します。
 加えて、職員による内部通報を促すために第三者専門機関を設置するなど、通報制度について、改めて考える必要があります。
 現状、職員がこうした不合理な圧力や要望を受けた際には、上長に確認することでその対応について協議されるものと思慮します。しかし、その上長が関わっていた場合や、同僚が談合を持ちかけられたことを見知った場合など、通告者が特定されかねず、また、実名による通報を原則としていることから、現時点で庁内で行われている公益通報制度には課題があります。そこで、コンプライアンス相談窓口として、匿名でも相談できる制度が必須です。入札をめぐる働きかけのほかに、議員側から政党機関紙の購読を求められたり、過日問題となった豊島区のようにパーティー券を売られたりした過去がないかどうか。本来であれば、政治資金規正法に基づき規制されるべき事案ではありますが、こうした悪い慣例や、一見ささいなことであっても職員が相談できるような匿名性の高い通報制度の構築を求めます。
 次に、談合を防止する入札制度についてです。
 談合とは、納税者が納めた税金を横取りする犯罪行為です。同時に、談合は密室の犯罪とも呼ばれ、内部告発、あるいは入札実施後の調査がなければ、公正取引委員会でも見つけにくいとされています。
 入札実施後の調査とは、予定価格と落札価格を比較して落札率を見ることです。予定価格ちょうどの入札や、限りなく近い価格で落札された場合、情報漏えいや官製談合が疑われます。しかしながら、江東区ではたとえ入札が終わっても、工事請負契約以外の案件の予定価格や最低制限価格は非開示となっており、検証することができません。契約・入札の透明性・公正性を後で精査するため、予定価格・最低制限価格を入札後に公表すべきであると考えますが、見解を伺います。
 次に、談合を防止する策として、私はこれまでの一般質問の場において、指名選定委員会の設置を提言してまいりました。江東区は、入札件数の多さや調達業務の効率化などに課題があるとのことで、委員会設置に対しては慎重な姿勢を示されてきました。指名選定委員会の設置が難しいのであれば、同じく恣意的な業者選定を防ぐ方法として総合評価方式が挙げられます。
 2005年4月に公共工事の品質確保の促進に関する法律が施行され、現在江東区では、予定価格3,000万円以上の工事で区が指定する工事契約において、価格点に加え、施工能力評価点と地域貢献点が加算される総合評価方式を導入しています。
 一方、港区では、建物清掃業務、用務業務等、区の施設等において日常的に業務を行い、人的サービスを中心とした予定価格50万円を超える長期業務委託契約に関しても、価格競争に加え、業務の品質を考慮の上、落札者を決定する特別簡易型総合評価方式を導入しています。談合を抑止するため、工事以外でも人件費割合の高い建物管理・清掃などの請負契約に関しても、港区が実施しているように総合評価方式を導入すべきだと考えますが、見解を伺います。
 また、その際は、障害者雇用率や男女均等雇用の達成などの社会的要素に加え、ISOなどの第三者認証基準を含め、江東区としても達成すべき長期計画の理念を採用してください。
 また、入札の開始前後に談合が行われた等の疑わしい情報があったときに、区民や業者が通報できる窓口、あるいは入札監視委員会といった第三者機関の設置が必要であると考えます。現状、江東区においては、談合情報を通報・相談する専用窓口がなく、公表はされていませんが、談合情報についての相談先として経理課がその役割を担っています。しかし、業者は立場上、行政側には通報・相談しづらい現状があると考えます。消費者庁でも、入札談合等関与行為に関する相談窓口を設けていますが、実際に公益通報者保護制度相談ダイヤルに確認したところ、あくまでも法律に関する相談を受け付けているとのことで、談合が行われたことを知った際の通報先としては、都道府県警察、あるいは公正取引委員会が設置する通報・相談窓口が適当であるとのことを御教示いただきました。
 いずれにせよ、入札執行前、あるいは開始直後に談合情報が寄せられた場合においては、至急の対応が必要となります。第三者通報窓口は24時間対応、もしくは遅い時間まで対応できるコールセンターなどが望ましく、最近では今年8月より前橋市が談合情報専用電話を設置しました。万が一行政側も談合に関わっている場合を考慮すると、行政内ではなく第三者機関である必要があると考えますが、見解を伺います。
 また、現状江東区にて入札制度の見直しを検討している契約・入札制度改善検討委員会は、委員が区職員のみで構成されていますが、客観的な視点が不正防止には必要なことから、学識経験者や公募を含む区民などを加え、第三者的視点を担保するべきだと考えますが、見解を伺います。
 最後に、この場を通じて、区長、区議会議員、行政職員の皆様にお伝えしたいことがあります。江東区政に尽力された大先輩である渋沢栄一氏が、実業を行う上で規範とした論語の中に、「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」という言葉が記されています。これは、「間違うことが悪いのではなく、それを反省して改めないことこそが間違いである」という意味です。間違いを起こしても、それを認めて反省し、改善すれば、救われる世の中であってほしいと願いつつ、行政を律する立場である我々議員として、区民からの信頼を失墜させた本事件は重く受け止める必要があります。
 以上、再質問を保留し、江東・自由を守る会の質疑を終わります。
   
 (山崎孝明区長登壇)

◯区長(山崎孝明) 
 さんのへあや議員の御質問にお答えいたします。
 行財政改革についてであります。
 まず、税金と職員を不正行為から守る行政制度についてのうち、口利き記録制度の創設についてであります。
 8月22日に設置した江東区契約にかかる不正行為等防止検討委員会では、副区長を委員長として、再発防止に向けて、業務委託契約に関すること、職員の倫理向上に関すること、議員等利害関係者との関わり方に関することの3点を検討事項として挙げております。
 このうち、議員等利害関係者との関わり方では、議員や事業者・業界団体等の利害関係者からの要望や申出等の記録及び公表する仕組みの構築を、想定される課題として挙げております。そのため、現在、利害関係者からの不当もしくは威圧的な働きかけがあった際の記録制度の構築につきましても、他自治体の制度を参考にしながら検討を進めているところであります。
 次に、口利き記録制度において、対象者を議員以外に区長、副区長も含めることにつきましては、今後、検討委員会の中で議論するものと考えております。
 次に、今後の不正行為を一掃するためにアンケートを全職員に行うべきとのお尋ねについてであります。
 8月26日に開催した第1回目の検討委員会の中で、不正行為等の防止に向けた課題を幅広く抽出するために、管理職を対象にアンケートを実施することを決定し、9月6日よりアンケートを実施しております。
 アンケートの内容については、契約に関する秘密情報が入札前に外部に漏れていると感じたことの有無や、議員や事業者等から働きかけや要請、勧誘等が過去にあったか否か、そして、職員倫理研修の頻度や内容に関すること、契約に関する秘密情報の漏えいを防止するために必要な対策などを設問しております。
 アンケートの対象者については、議員との接触は通常、管理職であることや、委託事業者を決定する際の最終決定は課長職以上の職員であることから、部長、課長のみに限定しており、全職員を対象とする考えはありません。
 今後、アンケートの集計結果を基により広く課題の抽出を行い、契約・入札業務以外においても、利害関係者との関わり方について改善すべき事項があれば、これを機に検討する必要があるものと考えております。
 次に、第三者機関の相談体制の構築についてであります。
 現在、利害関係者からの威圧的な働きかけや不当な要請があった際には、上司、あるいは副区長等の特別職に相談するなどの対応としておりますが、組織的な体制が構築されているとは言い難い状況であると認識しております。そのため、検討委員会では、職員が相談しやすい仕組みの構築や、議員等利害関係者への対応基準の作成についても想定される検討課題の一つであると考えております。
 お尋ねの弁護士等の第三者機関による相談体制については、手法の一つであると考えますが、職員にとって相談しやすい窓口の設置や、利害関係者と対応する際の基準の策定などを行い、職員を不正行為等から守る体制づくりについて検討してまいります。
 なお、職員に対するパワハラやセクハラについては、ハラスメント相談窓口で相談する体制が既に設置されております。
 今般、公正性・透明性が求められる入札業務に関して、職員が秘密情報を漏えいしたとされたことにつきましては、職員一人一人が当事者意識を持って、事件の重大さを受け止める必要があるものと認識しております。
 今後は、このようなことが繰り返されることのないよう、検討委員会において、外部有識者の御意見を踏まえながら、利害関係者からの不正行為等の働きかけに対する防止策の検討を早急に進めてまいります。
 なお、その他の御質問につきましては、所管部長から答弁いたさせます。
   
 (綾部吉行総務部長登壇)

◯総務部長(綾部吉行) 
 次に、行財政改革についての御質問のうち、談合を防止する入札制度についてお答えします。
 まず、予定価格や最低制限価格の公表についてのお尋ねであります。
 本区においては、工事請負契約の場合、予定価格の規模に応じて、入札前、または入札後に予定価格と最低制限価格を公表していますが、業務委託契約や物品等調達契約にあっては、入札前後ともに公表を行っておりません。これは、例年ほぼ同様の契約を締結する建物管理・清掃や印刷業務等について、予定価格や最低制限価格を公表した場合、次年度の契約において、参加事業者がこれらの価格を容易に類推することができ、公正な入札を妨げかねないとの理由によるものです。
 8月26日に開催した第1回の契約にかかる不正行為等防止検討委員会においては、予定価格等の公表の在り方を想定される課題の一つとして抽出したところですが、公表、または非公表とした場合のメリット・デメリットの比較や、他自治体における公表のルールを参考とするなど、公表の是非も含めた検討を進めていく必要があると考えております。
 次に、業務委託契約への総合評価方式の導入についてのお尋ねですが、入札方式の在り方についても、不正行為等防止検討委員会における課題と位置づけており、他自治体の状況を確認するなどの作業を速やかに進めております。
 総合評価方式を導入した場合、一定の基準や条件を満たした事業者であれば、自由に入札への参加を申し込むことができる制限付き一般競争入札を採用することが基本となります。したがって、入札に参加できる事業者を区が任意に選んで指名する現行の指名競争入札と比較すると、利害関係者からの働きかけを抑止できる効果は期待できます。
 一方で、価格競争のみによらない総合評価方式を、公正かつ透明性のある制度として構築するためには、履行成績の評定方法や、成績点・価格点以外の評価点及び具体的な評価項目の設定、さらには、各評価点の重みづけなど、制度の構築に当たっては慎重な検討が不可欠であると考えております。
 次に、談合など入札に疑わしい点があった場合の対応についてでありますが、区民や事業者から談合情報が寄せられた場合、区では、談合情報対応マニュアルに基づき、入札参加者への事情聴取や経費内訳書等の確認を速やかに行い、独占禁止法の規定に違反する行為が疑われる事実が認められたときには、公正取引委員会への通報を行うこととしております。
 また、公正取引委員会に独占禁止法に関する通報・相談を誰でもすることができる窓口があります。本区における談合情報の取扱体制の今後の在り方については、不正行為等防止検討委員会において検討してまいります。
 次に、契約・入札制度改善検討委員会についてのお尋ねです。
 本委員会は、副区長を委員長として関係部課長によって構成され、これまでは主に公共工事発注制度を対象として、入札制度の適正化や総合評価方式の在り方などを活発に議論し、業界要望等も踏まえた制度の見直しを実現してきたところであります。
 本委員会の委員に、学識経験者や区民の代表、業界団体を新たに加えるべきとの御意見でありますが、検討の内容には、最低制限価格や低入札価格調査制度における調査基準価格・失格基準価格の計算方法など、厳重な取扱いが必要な秘密情報も含まれており、情報漏えいのリスクとその影響が極めて大きいことから、現時点においては委員の構成について見直す考えはありません。

◯議長(山本香代子議員) 
 10番さんのへあや議員。
 さんのへ議員の残り時間は2分44秒です。
   
 (10番さんのへあや議員登壇)

◯10番(さんのへあや議員) 
 1点、再質問をさせていただきます。
 区民や業者が通報できる談合情報専用窓口の設置については、第三者機関による窓口の設置についての考えはないとの御答弁をいただきましたが、現状、江東区として相談できる窓口があるとのことで、こちらを業者や区民に対してどのように周知をされているのか、お答えください。
   

 (綾部吉行総務部長登壇)

◯総務部長(綾部吉行) 
 相談窓口の周知についての御質問です。
 周知については、機会を捉えて周知をさせていただいているところでございます。引き続き、談合等の対応についても、検討委員会の中で議論をさせていただきたいと思います。

出典:江東区議会会議録