はじめに

2026年7月2日(木)・3日(金)の2日間、私が理事として所属する都市整備委員会の視察で北海道(新千歳空港、札幌市、北広島市)を訪れました。

都議会において、会派として実施する視察については詳細な報告書の提出が求められますが、一方で委員会単位で行う視察は、報告書の提出そのものは義務づけられていません。

私はかねてから「公費で活動している以上、その使途と成果はできる限り都民の皆様に開かれた形でご報告すべき」という考えのもとに議員活動を行っており、委員会視察も例外ではありません。

どのような場所で、何を聴き、何を学び持ち帰ったのか。可能な範囲で具体的にお示しすることが、政務活動費・視察経費に対する説明責任の基本だと考えています。

そこで本ブログでは、今回の視察の内容を可能な範囲で詳しくご報告します。かなりのボリュームになってしまいましたが、メモをした内容と、委員会書記の皆様が撮影して下さった写真と共に掲載させて頂きます。


視察日程

1日目:7月2日(木)

<視察1>新千歳空港(北海道エアポート株式会社):環境負荷低減/安全・安心・利用者満足度向上

<視察2>札幌市役所:空き家対策/ウォーカブルなまちづくり(札幌駅前通地下歩行空間「チ・カ・ホ」、札幌市北3条広場「アカプラ」)

2日目:7月3日(金)

<視察3>北広島市役所:ボールパーク構想について説明聴取

<視察4>北広島駅西口再開発エリア現地視察/北海道ボールパークFビレッジ/エスコンフィールドHOKKAIDO現地視察


<視察1>新千歳空港(北海道エアポート株式会社)

新千歳空港は、国内線利用者数で羽田・成田・関空・福岡に次ぐ規模を持つ、道内最大の空の玄関口です。
以下のご説明は北海道エアポート株式会社(HAP)本社 総合企画本部長よりいただきました。

空港内会議室にて説明をいただきました

✍️空港運営権制度と道内7空港一括運営

北海道エアポート(HAP)は、2019年8月に設立された比較的新しい会社です。その特徴は、道内7空港(新千歳、稚内、釧路、函館、旭川、帯広、女満別)を1社で一括運営している点です。

もともとの管理者はバラバラで、新千歳・稚内・釧路・函館は国、旭川空港は旭川市、帯広空港は帯広市、女満別空港は北海道でした。HAPは3つの管理者(国・自治体)それぞれと個別に契約を締結する形で運営を担っています。

運営権の対価は30年間で2,920億円、資本金・社債1,000億円と銀行借入3,000億円で資金調達したとのこと。
2024年度決算は当期純利益ベースで赤字ですが、これは運営権取得に伴う利息負担が大きいためで、他空港との単純比較はできない構造です。

2020年6月には新千歳空港で日本初の「上下一体運営」(滑走路等の下物とターミナルビル等の上物を同一会社が運営する形態)が始まり、以降旭川空港などにも順次展開されています。

✍️環境負荷低減の取り組み

環境負荷低減に関する取組として印象的だったのは、日本で初めて本格的に空港で実用化された雪冷熱システムです。

除雪した雪を国内線南側の約8万立方メートル規模のプールに貯蔵し、3月にターポリン膜で断熱、6〜8月の冷房用に使用するというもの。同時に、飛行機の融雪剤(酸素濃度を上げる薬剤)を隣接するラムサル条約指定地「ウトナイ湖」に流出させないよう、希釈・処理する仕組みも併設されています。

質疑させて頂いている様子

環境負荷について、SAF(持続可能な航空燃料)の利用・導入についてはどうかと質疑をさせて頂いたところ、家庭用油を集めるイベント等は開催しているものの、なかなか普及していないというお答えでした。

後で理事者から教えて頂いたのですが、日本国内でジェット燃料全体に占める割合は1%未満(EU圏でも5%未満)にとどまり、集荷体制も含めて課題が多いのが実態とのことでした。

天ぷら油からのSAF精製効率は1リットルあたり約800ml、ただし残り8割は他用途(ナフサ等)に転用されるため、費用対効果の見極めが難しい段階です。

※そのほかにも、大規模災害時の対応について質疑しましたが、時間の関係上お答えを後日頂くこととなりましたので、改めて追記させて頂きます。

✍️インバウンド戦略

インバウンドについては、東アジア(韓国・台湾)は3時間圏内で日帰りに近い形での日中利用が集中しており、この時間帯以外の便を増やすことが課題。2025年12月からエア・カナダのバンクーバー線、ユナイテッド航空のサンフランシスコ線という北米直行便が季節運航(冬期)で新設されるとのことで、これは冬季ウィンタースポーツ需要(ニセコ等)を狙ったものです。

✍️東京都政への示唆

東京都は都営調布飛行場を運営していますが、羽田空港は国管理、成田空港は千葉県。空港政策における都の立ち位置は北海道とは異なるものの、以下の点は今後の都政に活かせる論点だと感じました。

  • 上下一体運営による効率化と、コンセッション方式のリスク配分
  • 雪冷熱に相当する「気候特性を活かした空調システム」(東京なら地中熱・下水熱・海水熱等の応用可能性など)
  • 空港を核とした広域観光戦略の作り方

<視察2>札幌市役所 ①空き家対策

札幌市役所での説明は、都市局監察担当課長、空き家対策担当係長よりいただきました。

札幌市役所前で撮影された集合写真です
説明を受けている様子です

✍️札幌市の空き家の現状

令和5年住宅・土地統計調査によると、札幌市の住宅・空き家は以下の状況です。

項目令和5年
人口約196万人(令和3年をピークに減少局面)
総住宅数約113万戸
空き家総数15万5,800戸
空き家率13.8%(平成20年以降ほぼ横ばい)
利用目的が明確でない「その他住宅」3万1,800戸
うち腐朽・破損あり3,600戸(うち一戸建て1,900戸が対策対象)

出典:札幌市まちづくり政策局政策企画部企画課「令和5年『住宅・土地統計調査』結果の概要」

札幌市の空き家率13.8%は21大都市中6番目に高く、参考として東京都区部は10.9%(15位)です。

✍️世田谷区との比較と、調査の限界について

説明の中で興味深かったのは、住宅・土地統計調査そのものの「限界」を、札幌市が正直に説明された点です。

同調査は抽出調査(全数調査ではない)であり、実態との乖離が生じます。
2024年4月30日の日経新聞では、世田谷区が独自の個別調査を行った結果、「その他空き家」が国調査2万3,840戸に対し区調査で883戸と大きく乖離していたことが報じられました(西東京市も国調査3,110戸に対し市調査875戸)。

札幌市は「この数字そのものにとらわれず、傾向を見る目安として捉えるべき」との立場で、既存の住民基本台帳や水道使用停止情報等から全体把握を検討しているとのこと。

平成30年に一時的に空き家率が11.9%まで低下した要因については、「私たちもなぜだろうと思っている」と率直にお話しいただきました。

この率直さは、政策の透明性という意味で非常に印象に残りました。EBPM(証拠に基づく政策立案)を標榜する以上、データの限界も含めて開示する姿勢は東京都政も見習うべきだと感じます。

✍️第2次札幌市空家等対策計画

札幌市では、2016年に第1次計画を策定、2021年3月に第2次札幌市空家等対策計画(2021〜2030年度)を策定しています。基本目標「総合的な空き家等対策による良好な地域環境の実現」のもと、3つの個別施策を展開しています。

①空き家等の発生抑制
セミナー、相談会、終活・生前整理イベントでの啓発、パンフレット配布、年末年始のSNS発信(親族が集まる時期を狙う)

②流通・活用の促進
不動産・法務関係団体との連携協定、専門窓口での相談対応

③管理不全空き家の解消
市民通報 → 現地調査 → 所有者調査 → 法に基づく措置

✍️令和7年度の運用実績

項目件数
新規相談・通報件数315件
特定空き家等認定件数67件
解決件数41件
令和7年度末時点 特定空き家等指導継続件数217件
特定空き家等 命令件数(累計)わずか2件

昨年度の通報急増の背景は、大雪による屋根からの落雪不安が大きかったとのこと。

札幌市の特定空き家認定217件は全国的にも多い水準ですが、これは「認定ハードルを比較的下げて、指導を厚くする」という方針の表れです。一方で、命令や代執行にはあまり踏み込まない運用は、京都市(年間監督約600件との比較質疑あり)とは対照的です。

✍️危険空家等除却補助制度と官民連携

札幌市の危険空家等除却補助制度は、通常型(補助率1/3、上限50万円、令和8年度予算1,050万円)と、除却後の土地を町内会・NPO等に5年間無償貸与を条件とする地域連携型の2種類があります。

ただ、地域連携型はこれまで使用実績ゼロとのこと。理由は所有者と使用希望者の意向マッチングの難しさ、および5年間の管理負担にあります。制度の理想と現場のニーズのズレは、東京都でも参考にすべき教訓だと感じました。

官民連携としては、株式会社クラッソーネと連携協定を締結し、「札幌市版すまいの終活navi」を運用しています。面積・最寄駅・道幅等の条件入力で、解体費と売却価格の概算を市民が把握できる仕組みです。デモを実際に見せていただきました。

さらに2025年6月30日には、株式会社アルバリンク(本社は東京江東区とのこと!)とも連携協定を締結。事故物件や再建築不可物件など、市場流通が困難な物件の買取・賃貸流通スキームを構築しています。

✍️東京都政への示唆

今回の視察で以下の点が判明しました。

  • 令和7年12月末時点で、空き家対策計画策定済み区市町村は62自治体中45自治体
  • 東京都は区市町村への技術的支援と財政的支援を実施
  • 今年度から、区市町村が支援する管理不全空き家等の除却費用を都が全額補助する制度を開始
  • 団塊世代の相続に伴う「空き家予備軍」への前倒し対策が今後の課題

札幌市の取組を踏まえて、江東区の視点から特に注目したい論点は次のとおりです。

  • 共同住宅(分譲マンション)の空き住戸への対応:札幌市の説明は主に戸建てが中心でしたが、江東区の湾岸タワマンの将来的な管理不全化リスクを考えると、区分所有マンションへの対応枠組みは早急に議論が必要
  • 官民連携の実装力:クラッソーネ、アルバリンクなど、民間サービスを市の窓口導線に組み込むスピード感は東京都でも導入可能

<視察3>札幌市役所 ②ウォーカブルなまちづくり

札幌市役所での2つ目の視察テーマは、ウォーカブルなまちづくりの現地視察です。まちづくり政策局都心まちづくり課エリアマネジメント担当係長にご案内いただきました。

札幌市役所ロビーにて説明を受けている様子

✍️札幌市の「Well-Moving City SAPPORO」ビジョン

札幌市は、20年後の未来を見据えた新たな都市空間コンセプトとして「Well-Moving City SAPPORO」を策定しています。

世界的なまちづくりのムーブメントである「Walkable(ウォーカブル)」の概念をさらに深化させ、Well-being(それぞれの良い状態)と、北海道弁の「〜さる(環境ゆえに自然とそうしてしまう)」を組み合わせた「心も一緒に動くまち」を目指すというもの。

5つの重点方針:

  1. 歩くことが楽しく、健康に暮らせる
  2. 札幌らしく、四季を通じて歩かさる
  3. 誰もが安心して、円滑に移動できる
  4. 環境に優しく、みどりとともに暮らせる
  5. 居心地が良く、自分らしくいられる居場所がある

このビジョンを実装する象徴的な公共空間が、これから視察するチ・カ・ホとアカプラです。

✍️都心まちづくり推進室(通称「まち室」)

札幌市には、平成14年度に設立された都心まちづくり推進室(通称「まち室」)という組織があります。現員25人で、以下を役割としています。

  • 「都心まちづくり計画」における中長期的なまちづくりのあり方・将来像の提示
  • まちづくりと一体的に展開する環境エネルギー施策
  • 民間主体の都市開発プロジェクトの調整・事業化支援
  • 各地区におけるエリアマネジメントによるまちづくり推進

「都心まちづくりの一元化窓口」として、行政の縦割りを超えた実装組織を持っている点は、東京都政においても大いに参考にすべき体制だと感じました。

✍️札幌駅前通地下歩行空間「チ・カ・ホ」

地下歩行空間(チ・カ・ホ)での視察風景

チ・カ・ホは2011年3月12日に開通した、延長約520mの地下歩行空間です。札幌駅と大通駅を結び、地下鉄すすきの駅までを含めると1,900mが直線でつながります。

項目内容
区間地下鉄南北線さっぽろ駅〜大通駅
延長約520m(市道区間360m、国道区間160m)
幅員20m(通路部分12m、憩いの空間4m×2)
事業期間2005〜2011年
総事業費約252億円(札幌市172億円、開発局80億円)
供用開始2011年3月12日

出典:札幌市建設局「札幌駅前通地下歩行空間の整備効果」

総事業費252億円のうち、札幌市負担は172億円。都政の湾岸再開発事業の予算感と比較してもこの割合で実現できるのかと驚きました。

✍️整備効果(開通前比較)

指標開通前H22開通後R7変化
札幌駅前通 地上・地下歩行者通行量37,408人/日83,041人/日約2.2倍
大通・すすきの地区通行量(万人/日)2.31.8(R2)コロナ禍で減少も回復傾向

札幌駅前通まちづくり(株)のアンケート調査(R2)では、都心部での変化について、

  • 「都心部の移動が快適になった」:79.1%
  • 「札幌都心部の魅力が向上した」:40.6%
  • 「にぎわい・活気が生まれた」:41.1%
  • 「経済活動が活発化した」:37.0%

現地では係長より「冬の方が通行量が多い」「外を歩けないくらい寒い時期があるので、地下歩行空間の需要が非常に高い」との説明をいただきました。積雪都市ならではの機能価値が、明確に数字に表れています。当日は日差しが暑い日でもあったので、夏場も需要があることを実感しました。

✍️「道路」と「広場」の複合的な法制度設計

地面の床の色が濃い部分がイベント貸出用スペースとのことです

チ・カ・ホの法制度設計は、東京都政に特に参考になる点です。

  • 通路部分12m:道路法適用(歩行者専用道路)
  • 憩いの空間・交差点広場:札幌市条例で「広場」と位置付け(道路区域は残したまま)
  • 沿道ビル接続部:民間事業者が自ら費用を出して整備、貸出不可(公共空間として維持)
  • 有料貸出区域:イベント等での柔軟活用

「道路空間の一部を条例により札幌駅前通地下広場と位置付け」するという手法により、道路法の枠内で広場的な柔軟活用を可能にしました。東京都のTOKYO Walkable施策における法制度運用の重要な参考事例です。

✍️札幌駅前通まちづくり株式会社の設立経緯

チ・カ・ホ整備に伴い、以下の経緯で官民共同のエリアマネジメント会社が設立されました。

  • 2005年:札幌駅前通の整備開始と同時に、駅前通沿道地権者31社により「札幌駅前通協議会」発足
  • 2008年:都市計画提案を受け、札幌市が地区計画を決定
  • 2007年:地下歩行空間を「単なる地下通路ではなく広場として活用」する検討開始、意見交換会設立
  • 2010年9月「札幌駅前通まちづくり株式会社」設立

チ・カ・ホ整備と並行して、エリアマネジメント組織を先行して立ち上げたことが、その後の運営成功の鍵になっています。
東京都では再開発と同時にエリアマネジメント会社の設立を促す仕組みが弱く、この点は湾岸再開発(豊洲、有明、辰巳等)で参考にすべき論点ではないかと思います。

✍️札幌市北3条広場「アカプラ」

アカプラは2014年7月19日にオープンした、延長約100mの広場です。札幌駅前通と北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)の間に位置します。

項目内容
区間市道北3条線の市道西5丁目線から駅前通までの区間
延長約100m
幅員約27m(広場利用範囲は約14m)
事業年度2013年度
供用開始2014年7月19日

出典:札幌市「札幌市北3条広場」

北3条通は、1924年に道庁正面門から駅前通まで市内初の近代舗装として木塊舗装(車道)・アスファルト舗装(歩道)が整備され、1925年には東京から運ばれたイチョウ32本が植樹された歴史的な通りです。北海道最古の街路樹として29本が現存しています。

✍️民間再開発の公共貢献としての広場整備

アカプラの整備手法は、全国的にも先進的なものです。

  • 整備者:隣接地で新設ビル(札幌三井JPビルディング)建設を進めていた民間事業者(三井不動産・日本郵便)が、ビル建設を機会とした公共貢献の一環として実施
  • 法的位置づけ:これまで市道北3条線として道路管理者が維持管理してきたが、広場条例を制定し、整備後も道路区域の指定を残したまま、広場として利用
  • 指定管理者:札幌駅前通まちづくり株式会社(チ・カ・ホと同じ)

都市計画提案における公共貢献項目としては、駅前通に面した街区整備、地下歩行空間の価値向上、都心交通の改善、北3条通の広場化、環境整備、オープンスペース整備が明記されており、民間再開発と公共空間整備を一体的にパッケージ化する手法として東京都でも大いに応用可能です。

✍️現地視察で印象に残った点

現地では、以下のような特徴的な工夫を実感しました。

チ・カ・ホ

  • 天井の各所にスルーホール(天窓)を設けて自然光が通路内に差し込む設計
  • 出入口階段部分もガラス張りで開放感を演出
  • 「憩いの空間」(幅4m)にベンチや机、無料Wi-Fi
  • 交差点広場でのイベント(物産展、観光PR、アート展示)が高稼働率
  • 沿道ビル接続部が「路面店や地下街のようなしつらえ」で、にぎわい効果を生み出している

アカプラ

  • 約21万個の江別産れんがを敷設
  • 道庁赤れんが庁舎への視線を意識したデザイン
  • 通年活用可能な広場として、市民が思い思いに過ごせる空間
  • 冬季はイルミネーション、夏季はイベントで活用

両施設を貫く運営思想として、条例のほか指定管理者が策定した「活用ガイドライン」に基づき、広場の特性や周辺環境、来街者の安全に配慮した運営が徹底されている点は特筆すべきです。

✍️都心まちづくりの一元化とWell-Moving Network

札幌市は、この2施設を核としたエリアマネジメントの成功をベースに、「Well-Moving Network」という産学官民の共創ネットワークを立ち上げています。

  • 産(民間企業):低層部のにぎわいづくり、公開空地の積極的活用、エリアマネジメントへの主体的参加
  • 学(大学・高校):ゼミや学生団体のまちづくり参画、都市政策研究、小中高の総合学習
  • 民(地域住民):道路・公園・広場の積極活用、自転車や公共交通の利用促進
  • 官(行政):推進プログラム策定、規制緩和、支援制度整備、データのオープン化

さらに「札幌市パブリックスペース活用ガイドライン」を策定し、フリーマーケット、マルシェ、ライブ、展示会、映画上映、キッチンカー出店など、市民の「やってみたい!」を実現する手続きフローを明確化しています。

行政が「使い方を制限する側」ではなく「使いこなしを支援する側」に回っている姿勢は、東京都政も強く見習うべき点だと感じました。

✍️東京都政・江東区への示唆

チ・カ・ホとアカプラの視察から、以下の論点を持ち帰りました。

1. 民間再開発の公共貢献としての広場整備
アカプラの整備手法は、東京の都市再生特別地区制度でも応用可能。江東区の湾岸再開発(豊洲、有明、辰巳)で、民間開発と一体的な広場整備を促す仕組みとして参照すべき。

2. 道路法と広場条例のハイブリッド運用
チ・カ・ホの「道路区域を残したまま広場条例で運用」する手法は、東京の道路空間の柔軟活用(ほこみち制度との組み合わせ含む)に応用可能。

3. エリアマネジメント会社の官民共同設立を再開発と同時に
札幌駅前通まちづくり(株)が整備段階から関与した経験は、東京の湾岸再開発における最大の教訓の一つ。

4. 積雪都市の知見の東京への応用
「外を歩けない冬」に対応した地下歩行空間の知見は、東京の「猛暑・豪雨で外を歩けない夏」に対する屋根付き歩行空間や地下ネットワーク整備の議論に応用可能。

5. 都心まちづくり推進室のような一元化組織
東京都の縦割りを超え、福祉的な視点も踏まえたまちづくり組織のあり方を、札幌市「まち室」の実装事例から学ぶべき。

6. 江東区視点
豊洲・辰巳・東雲などの湾岸エリアで、駅と街区を繋ぐ歩行者ネットワーク整備において、チ・カ・ホの経験(通行量2.2倍、地価2.2倍)は具体的な政策効果の目安として活用可能。


<視察4>北広島市 ボールパーク構想

2日目は札幌市の隣、北広島市を訪問しました。市議会議長、経済部長兼ボールパーク推進室長より説明を受けました。

北広島市役所は平成29年に新しく建てられたとのこと。とても綺麗な市役所でした。
説明を受けている様子

✍️北広島市とボールパーク構想の概要

北広島市は、新千歳空港と札幌市のほぼ中間に位置する人口約5万6,000人の市です。JR北広島駅から札幌まで快速16分、新千歳空港まで22分。もともとは札幌のベッドタウンとして成長してきましたが、平成19年の人口約6万2,000人をピークに、現在も人口減少局面が続いています

ボールパーク構想の対象地は、北広島駅から札幌方面へ約1.5kmに位置する32ヘクタールの市有地。もともとは市の総合運動公園予定地でしたが、昭和47年の第1期総合開発計画で構想されて以来、実質的には50年以上「塩漬け」の状態で、市の除雪した雪捨て場として使われていた土地でした。

✍️誘致成功の経緯

2015年、当時4期目だった上野正三市長(現6期目)の公約で、塩漬けの運動公園計画が再検討されることになりました。

  • 市の試算では単独整備で40〜50億円が必要
  • 近隣(江別市、千歳市)に類似施設あり、費用対効果に疑問
  • 国土交通省補助金約1,000万円で官民連携可能性調査を実施

この調査の中で、ファイターズに「新球場で2軍試合を開催してもらえないか」と打診したところ、ファイターズ側から「自前の球場を持ちたい」「32ヘクタールの更地があるなら、総合運動公園計画をボールパーク構想に置換検討できないか」との示唆があったとのこと。

当時の職員は「ファイターズが札幌ドームを離れるとは想像もつかなかった」と振り返っていましたが、上野市長の「1〜2%の可能性でもトライしよう」との判断で、内密調査を開始。その後、新球場構想がメディアに露出したことで札幌・函館・旭川・釧路等が誘致に名乗り、北広島市も2016年に議会で誘致表明。2年間の誘致活動を経て、2018年に建設地として決定されました。

工事は2020年から2年半、2023年春にエスコンフィールドHOKKAIDOが開業しています。

✍️官民連携スキームの特徴(他球団との最大の違い)

北広島のボールパーク構想の最大の特徴は、スタジアムを含む上物すべてが「民設民営」である点です。

ボールパークビレッジ
  • 民間(ファイターズ・日本ハムグループ):スタジアム総事業費約600億円を100%負担、エリアマネジメント
  • 行政(北広島市):インフラ整備、行政手続き

他球団の新スタジアム構想は「公設民営」が主流ですが、北広島は民間側が「思い通りのスタジアムにしたい」との思いで100%投資を選択。行政のお金が入ると、改修や設備更新に予算取り・入札・議会承認等の時間がかかり、スピード感が損なわれるためとのこと。

「不具合があればすぐ改修をかけて、どんどんパワーアップできる。これは公設ではできない」との説明が印象的でした。

✍️行政手続きの実務(東京都に持ち帰りたい論点)

「行政の壁」を突破するための実務は、非常に学びが多いものでした。

①都市計画区域変更(人口フレーム方式によらない北海道初の事例)

もともとの調整区域を市街化区域に編入する必要がありましたが、人口減少地域では通常「既存の市街化区域を使えばいい」と道庁から否定的な回答を受けます。しかし全国事例を調査すると、人口フレーム方式によらない区域編入の例が存在。北広島市は道庁に月1回・週1回訪問し、時にファイターズ職員と国土交通省まで直接足を運び、1年半かけて北海道初の人口フレーム方式によらない区域編入を実現しました。

②ウォーカブル区域指定と国補助金確保

JR新駅は「請願駅」(初めてこの存在を知りました)のため通常は国補助金対象外ですが、ウォーカブル区域に指定することで新駅整備費80億円のうち約半分(約30億円)の国補助を確保したそうです。

③都市公園建蔽率の条例改正

スタジアムは都市公園施設に位置づけられていますが、元の条例では建蔽率12%が上限でした。横浜スタジアム(横浜公園内、25〜30%)の事例を参考に、議会承認を得て12%→53%に引き上げ。全国トップレベルの水準です。(国の法律を超えても大丈夫なのかしら、と心配になるレベルです)

④屋外広告物条例の独自制定

北海道条例では公園内の民間広告は原則禁止で、ファイターズロゴすら掲げられませんでした。札幌市に次ぎ北海道で2番目として独自条例を制定し、面積要件付きで民間広告物の掲出を可能にしました。

⑤地名変更

地名を「共栄」から「Fビレッジ」に変更。地名にアルファベット・カタカナ表記を用いる全国的にも珍しい事例です。

✍️フェージング開発という考え方

北広島のボールパーク構想は、全体20年スパンの開発計画ですが、「20年後の完成形を今決めない」というフェーズの考え方が採用されています。

  • 4年ごとに区切ってフェーズ1〜3で進行
  • フェーズ2は2028年頃:JR新駅、北海道医療大学移転(学生4,000人)、タワーマンション、ホテル、オフィス、賃貸マンション
  • フェーズ3以降は未定

一般的な行政計画は10〜15年計画で予算取り・着工後は止められない性質があり、10年後に社会情勢とマッチしないケースも少なくありません。「民間主導だからこそ、時代に応じた機能を都度検討できる」というフェージング方式は、都市開発における新しい発想として非常に参考になりました。

✍️経済効果と社会的価値の両建て評価

三菱総研の試算によれば、経済効果は以下のとおりです。

  • 北広島市内:年間約500億円
  • 北海道全体への波及効果:約1,000億円

より注目すべきは、北広島市が人口減少にもかかわらず税収が上昇している点です。「稼げる場所」を維持することで、10〜20年後の行政サービスを維持する。これは地方都市の悪循環(人口減 → 税収減 → サービス低下 → さらに人口減)を断ち切るモデルとして意義があります。

そして特に重要だと感じたのが、経済効果だけでなく「社会的価値」も同時評価する方針です。市が三菱総研に依頼する際、経済効果に加えて社会的価値の検証も要請したとのこと。目に見えない価値の可視化は、EBPMの新しい潮流として東京都政も参考にすべきだと感じました。

✍️広域自治体連携と交通対策

北広島市はボールパーク構想を「北広島市とファイターズのプロジェクト」ではなく、「北海道全体のプロジェクト」と位置づけ、周辺自治体を巻き込む協議会を設置しました。分科会(観光、教育、交通アクセス)で2か月に1回、担当者レベルで会合を重ねてきたとのこと。

交通対策は特に大規模で、試合日には3万人以上・車5,000台が時間集中します。開業までに5年間、北海道開発局、道庁、北海道警察、NEXCO東日本との協議を重ねました。開業初年度は渋滞が発生しましたが、現在はカメラ・監視カメラで札幌中央管理センターから信号タイミングを手動制御する等の対応で、社会問題化する渋滞は解消しているとのこと。

✍️北広島駅西口再開発エリア

北広島市役所での説明後、株式会社エスコン、北広島市企画課幹事のご案内で、北広島駅西口再開発エリアを視察しました

北広島駅西口は、市有地4区画(A〜D)を株式会社エスコンが100%投資で開発する事業です。現在はA・B区画が進行中。

  • A区画:都市公園を廃止し、代替公園機能をビルのテラス段状デザインで補完
  • B区画:分譲タワーマンション(197戸)は坪単価約230万円、竣工1年半前に完売。購入者の6割が北広島市外、うち相当数が本州からの移住・セカンドハウス。1階に認可保育所併設

「公園機能をビル上に代替配置する」手法は、北海道では珍しく、東京では渋谷区等において類例がある点が話題になりました。

余談ですが、こちらの公園でミヤマクワガタを見つけました。子ども達にも嬉しい環境です。

なお、市の職員体制はプロジェクト専任20〜30人。人口5万6千人の市として異例の集中投下です。「小さな街だからこそのスピード感」という表現が印象的でした。

✍️エスコンフィールドHOKKAIDO/Fビレッジ

  • 屋根:背景型スライド式屋根(開閉に約25分)。訪問日は開放状態
  • 来場者数:初年度から350万人、野球以外のイベント来場者が野球観戦者を上回る(2年目以降)
  • キッズスペース:試合を見ない子ども連れも来場動機になる遊具・ミニ野球コーナー
  • タワーイレブンホテル:スタジアム内から観戦できる宿泊施設
  • クボタアグリフロント:農業体験・レストラン併設施設
  • 完全キャッシュレス(現金取扱いなし)
  • 防災機能:Fビレッジ全体が「災害緊急地域避難場所」指定、球場は有事の際に約1万人が3日間滞在可能

✍️東京都政・江東区への示唆

北広島市の視察から、東京都政、そして江東区議会議員としての視点で、以下のような論点を持ち帰りました。

1. 民間主導のインフラ整備と行政補助のバランス
江東区の湾岸再開発(豊洲、有明、辰巳)で、行政と民間の役割分担を再設計する際の参考になると考えました。

2. 都市公園法の柔軟運用
有明アリーナ、豊洲ぐるり公園、辰巳の森海浜公園など、東京の都立・区立公園における複合利用可能性を議論する材料として。

3. 「社会的価値」の政策評価への組み込み
経済効果だけでなく、目に見えない社会的価値を評価する手法は、都政EBPMの新しい基準として提案する価値があると考えています。

4. 広域自治体連携の仕組み
江東区・港区・中央区の湾岸連携協議会構想など、東京の湾岸エリアマネジメントへの応用可能性を検討したい。

5. フェージング開発の思想
20年後を今決めない、時代の変化に応じて機能を再設計する開発手法は、東京の長期計画にも取り入れるべき発想です。

6. 屋外広告物条例の独自制定
札幌市に次ぎ北海道で2番目に独自条例を制定した北広島市のように、江東区でも臨海部の魅力向上に向けて独自ルールの検討余地があります。


メンっ!と総括

2日間の視察を通じて、都市整備行政における「行政の壁」の突破実務、官民連携のリアル、そしてEBPM(社会的価値の可視化を含む)の実装を、現地でしっかりと学ぶことができました。

新千歳空港では気候特性(雪)を活かしたインフラ運営、札幌市では空き家対策とウォーカブルなまちづくりで蓄積された知見(総事業費252億円のチ・カ・ホによる通行量2.2倍・地価2.2倍の実績、民間公共貢献としてのアカプラ整備、Well-Moving Cityビジョンによる産学官民ネットワーク)、北広島市では50年塩漬けの土地を全国注目のボールパークに変えた官民連携の実務。
それぞれに東京都政、江東区政に持ち帰れる学びがありました。

特に印象的だったのは、いずれの視察先でも「行政が使い方を一方的に決める」のではなく「地域や民間の発想を支援する」姿勢が徹底されていた点です。札幌市の「都心まちづくりの一元化窓口」や、北広島市の「プロジェクト専任20〜30人の集中投下」など、組織体制のあり方も含めて、東京都政に反映させたい学びが数多くありました。

今回の視察で得た知見は、今後の都議会都市整備委員会での質疑と今後の政策提案に活かしてまいります。

視察にご対応いただいた新千歳空港(北海道エアポート株式会社)、札幌市、北広島市、株式会社エスコンの皆様に、心より御礼申し上げます。

【視察費用について】
本視察の費用(交通費・宿泊費)は公費(視察経費)から支出されています。
視察における飲食費や飲食に伴う交通費等は私費で支払っております。
また、参考までに申し添えますと、 往復の航空機はエコノミークラスを利用しており、 空港ラウンジ利用券の配布などもございませんでした。 一般の搭乗手続きにて、他の乗客の皆様と同様の扱いで移動しております。
公費で参加させていただいている以上、こうした点も含めて 説明責任を果たすべきと考え、記載いたしました。

さんのへ あや

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